BiPSEE 代表取締役CEO 松村雅代

治療の不安和らぐVRゴーグル

2020年2月号 LIFE [ヴィジョナリーに聞く!]

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松村雅代氏

松村雅代氏(まつむら まさよ)

BiPSEE 代表取締役CEO

群馬県生まれ。筑波大を卒業しリクルートに入社。その後、米ケース・ウエスタン・リザーブ大大学院に留学。2006年に岡山大医学部を卒業し心療内科医に。17年7月BiPSEEを設立し代表取締役CEOに。

――どういう仕組みですか。

松村 ゴーグルにスマートフォンをセットしたもので、お子様に二次元の映像を両目で見てもらう形になっています。「お菓子の国」「海辺のゴリラ」といったお子様が見たくなるシーンを用意しました。待合室や病室で付けて、最初は周りの景色にキャラクターが映り込むAR(拡張現実)の映像を見てもらいます。この状態ではお父さんやお母さんの姿も見えます。看護師さんのエスコートで治療や処置、検査の場所に着いたら映像をARからVR(仮想現実)のものに徐々に切り替えます。すると映像に没入し緊張感や不安感が和らぎ、楽しく治療を受けることができます。意識がそれて痛みも感じにくくなります。お子様に医療現場に慣れていただき、これがなくても大丈夫になるまでサポートするという考え方です。お子様には治療を受けていることをわかってもらい、自分で頑張れたと実感してもらうことに重きを置いています。2、3歳児から使っていただいている病院が多いです。

――なぜこれを。

松村 2016年に発達障害の方のためのプログラミングスクールにメディカルアドバイザーとして参加したときに、VRのエンジニアやデザイナー、歯科の治療にVRを使う構想をお持ちの方と出会ったのがきっかけです。VRはゲームだけのものではないと聞き調べたところ、全身熱傷の痛みの緩和や帰還兵のPTSD治療など海外で医療に活用されていることを知りました。最初は歯科用を手掛けましたが、Wi―Fiを使ってコントローラーを操作する仕様は複雑で医療サービスとして難しく、現在の形となりました。

――どうして株式会社で。

松村 リクルートで営業をし、米国でMBAを取り、いくつか会社の立ち上げに参画し、その後、医師になりました。患者と医療従事者と医師の関係を変えたいというモチベーションがとても高かったので事業としてやろうと考えました。現在、メンタル領域で開発を進めている、「デジタル・セラピューティクス(治療の一端をデジタル技術が担う)」に繋がる第一歩としても事業化してよかったと思っています。

――次の一手は。

松村 ひとが本来持っている力を引き出し、高めるのが医療の役割だと思っていて、それを後押しするツールとしてVRを使っていきます。デジタル機器は患者さんが自分で使うという行為が入るので、自分が自分のためにやっているという自己効力感を持ってもらいやすいと思います。デジタル機器の利用データを積み重ねて、「医療の個別化」も実現していきたいと思っています。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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