大阪厚生信金「夜逃げ会社」に不可解融資

2017年2月号 BUSINESS

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デジックス内部から流出した借入金一覧

「金融機関から借りるだけ借りて年末に夜逃げするそうだ。融資を引き出すため、せっせと架空のリース取引を膨らませている」――。東京・渋谷区に本社を置くある会社について、このような情報が本誌に寄せられたのは昨年晩夏の頃だった。

この会社はその後、情報通り、10月末頃まで金融機関からお金を借り続け、数十億円の負債を残して12月末に事業継続を打ち切った。金融サービス会社「デジックス」の末期の様子だ。

デジックス内部から流出した「借入金一覧」(写真)によると、「計画倒産」したように見えなくもないこの会社に融資していた金融機関は、メガバンクから信用金庫まで17に上る。

2010年と早い時期から長期資金を貸していたのは、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行。「経営緊急制度」など制度融資の資金を、信用保証協会の保証付きで貸していた。

続いて、運転資金名目で13~15年頃から貸し始めたのが東日本銀行や北陸銀行、北國銀行などの地方銀行や商工組合中央金庫。この辺りからプロパー融資となる。茨城県の第1地銀「常陽銀行」は倒産4日後の12月30日を期日に、1億円を手形で貸していたと記されている。

メガバンクは保証協会に損害を回すだろうし、地銀もこの程度の焦げ付きは淡々と処理するだろう。だが、15年10月から13カ月間、架空情報のあったリースの仕入れ用資金として月3千万~1億数千万円を貸していた信用金庫はどうだろう。

その信金は大阪市中央区に本店がある「大阪厚生信用金庫」。遠く離れた東京の会社に、本店でなく大淀支店という一支店が、残高ベースで最大9億円前後も貸していたことが、前述の借入金一覧に記録されている。

デジックスは、クレジットカード会社と直接取引ができない零細業者に信用を供与し、客からカードによる支払いを受け付けられるようにするサービスを展開していた。

デジックス関係者によると、小規模のマッサージ店や飲食店に重宝がられ業容を拡大したが、要は資金の立て替えだから、拡大すればするほど多額の運転資金が必要になり、メガバンクから地銀、信金へと、通常の会社とは逆の方向で付き合う金融機関を増やしていったという。

小規模の金融機関は、資金運用先に困っているのか、比較的簡単に融資してくれる。大阪厚生信金はリース契約を結んだことを示す書類のコピーを持ち込むと、見合う資金を貸してくれるため、不備のある書類を大量に持って行って、毎月末に多額の融資を受けていたという。

昨年10月中旬、信販取引をしていたエステ会社に入金が遅れたことで資産を差し押さえられ、金融機関から新規や追加の借り入れができなくなったときも、大阪厚生信金は反省文のようなものを出したら10月末も融資してくれた、と関係者は話す。

エリア外の会社に一支店が多額の融資をするのは問題ではないのか、リース取引の実態をきちんと調べて融資したのか、差し押さえ後の貸し付けは情実融資に当たらないか、計画倒産に引っかかったのではないかと大阪厚生信金に尋ねたところ、「回答できない」との返事だった。

貸すほうもおかしくないか。

   

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