「社債償還」に苦しむ4期連続赤字の「イトキン」

2015年7月号 BUSINESS [インサイド]

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「ミシェルクラン」「ヒロコ・コシノ」「オフオン」などを展開するアパレル大手のイトキン(東京都渋谷区)が深刻な不振にあえいでいる。

2015年1月期は2桁減収で56億円もの最終赤字となった。前期も40億円の赤字であり、実に4期連続の赤字である。商品力不足から在庫が膨らみ、セール時期の値引き幅が広がる傾向にある。業界ではかねて辻村章夫社長(59)ら経営陣の手腕を疑問視する声があったが、ここにきて経営不安説が囁かれ始めた。

メーンバンクの三菱東京UFJ銀行はすでに債務者区分を引き下げ、「事業戦略開発室」(通称ジセンカイ)に移管した模様。「ジセンカイ」とは同行の大口問題融資先の再生を手がける専門部署で、今後は銀行主導の再建策が練られる可能性が高い。

消費の二極化が進む中、中流層をターゲットとする百貨店の婦人服売り場は消費増税による買い控えからの回復が遅れている。円安で海外生産のコストが跳ね上がり、経営環境は厳しくなるばかり。

こうした中、同業のワールドは400~500店舗の閉鎖など大掛かりなリストラ策を打ち出したほか、TSIホールディングス(東京スタイルとサンエー・インターナショナルの共同持株会社)も不採算ブランドの廃止や希望退職者の募集を始めた。「もっとも状況が厳しいのがイトキン」というのが業界の見方である。

8月末には3年前にみずほ銀行の保証付きで発行した23億円の社債償還が控える。リファイナンスに向け銀行の協力が不可欠だが「いまの業況では、はいそうですかと応じる銀行はないだろう」(取引行関係者)。

ちなみに同社の創業は1950年。ワンマンで知られた創業者の辻村金五氏は12年に死去。長男浩一氏(68)が会長、次男章夫氏が社長を務めるが、実質的に経営を取り仕切るのは昭和15年生まれの松本煕副社長ら先代の番頭たち。「旧態依然の体質では変化の激しいアパレル業界で生き残れない」(業界関係者)。

   

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