2014年5月号 POLITICS [ポリティクス・インサイド]
安倍晋三首相の愛国心の過剰露出と、霞が関で話題なのが、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の記憶遺産への特攻隊資料の申請問題だ。首相から申請手続きに入るよう指示があったとされ、「集団的自衛権問題が佳境の折に雑音を増やすだけ」と自民党内からも懸念が上がっている。
記憶遺産には、すでに世界全体で約300件が登録されている。英国のマグナ・カルタ(大憲章)やアンネの日記、グーテンベルク聖書などだ。日本では遺跡や自然が対象の世界遺産や世界文化遺産ほどには注目されなかったが、記録画家・山本作兵衛氏の筑豊の炭鉱画が2011年に登録されて話題となった。
首相がご執心の特攻隊資料というのは、鹿児島県南九州市にある知覧特攻平和会館が保存する資料だ。出撃前の遺書は涙なしには読めない人間味あふれるものだが、特攻礼賛と取られかねず、国際的に認められるか疑問が残る。
今年は部落解放運動団体の全国水平社の創立宣言などの資料と戦後に引き揚げ船が帰港した舞鶴の引揚資料館の資料が申請対象とされている。1カ国から3件以上の場合はユネスコ国内委員会が調整する。水平社に違和感を覚えた首相の「お友達」からの陳情があったとされる。
霞が関で話題なのは、文部科学省の担当者が、お騒がせ発言の日本放送協会(NHK)会長、籾井勝人氏の娘さんの籾井圭子さん(1972年生まれ)であること。慶大法学部を卒業して文部科学省に入ったバリバリのキャリア官僚。才色兼備で人当たりもよく、父とは対極的な評判だ。うまく捌けば、父の失点をカバーできるかも……。