福島「原発作業員」がいなくなる!

建設労働者不足で「入札不調」が続出。1Fに外国人作業員を受け入れる日がやって来る。

2013年12月号 LIFE

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福島第一原発で働く作業員(東京電力提供)

全国の建設現場で人手不足が深刻化している。アベノミクスの第2の矢、「財政出動」(国費10兆円超の緊急経済対策を含む2012年度補正予算)によって春先から公共工事の発注が急増。13年度上半期(4~9月)の建設会社の公共工事請負金額は前年同期比24%増の8兆3928億円と10年ぶりに8兆円超えとなった。一方、長く続いた業界不況と高齢化で建設業就業者は03年の604万人から12年の503万人へと100万人も減少。労働需給ギャップが広がる一方だ。

「補正予算投入が建設市場の需給を一段と逼迫させ、全国で公共工事の入札不調を増やし、結果として被災地復興の足を引っ張っているのではないか」

10月21日の衆院予算委員会で質問に立った民主党の前原誠司は、国土交通相の太田昭宏に問い質した。「入札不調」とは、公共工事入札で予定価格を下回る業者がいなかったり、採算難を理由に全業者が入札を辞退すること。要するに、人手不足による労賃上昇や資材価格の高騰を理由に、入札が成立しない事例が続出しているのだ。

「入札不調には変動があり、8月の数字を見ると宮城では減っている」と太田は答弁。確かに、8月末時点の宮城県の入札不調の割合は前年同期の37%から22%に低下しているが、それでも2割を超える高水準。「いろいろ手を打っているが問題は解消されてない。年度末に向けて再び需給が逼迫するのは必至」と能天気な答弁をする大臣を尻目に、国土交通省の担当部局はお手上げの状況だ。

予定価格の上積みで凌ぐ

入札不調で混乱しているのは東北の被災地だけではない。景気回復で工場やマンションの建設など民間工事も全国的に増加傾向にあり、とりわけ復興需要のある東北を筆頭に民間の建設投資が盛んな関東、関西に建設労働者が吸い寄せられている。「鹿児島から福岡へ、九州から関西、関東へ、関東から東北へと人が流れている」(人手不足に頭を抱える鹿児島市の建設会社幹部)。「来年は東京本社に人を吸い上げられるのではないか」(大手ゼネコンの広島支店)。「市民や議員の皆さんに率直にお詫びする」(市庁舎新築工事の受注を希望する建設業者がなく、2度にわたる入札不調を陳謝する富山県射水市長)。

地方の経済ニュースで最も旬なネタは「建設労働者の不足」、そして「入札不調」である。かつて入札不調といえば、1件当たり数千万円の道路舗装工事などが中心だったが、最近は10億円単位の大型工事から100億円を超える主要プロジェクトにまで広がっている。

16年の北海道新幹線開業を睨み、函館市が内外のコンベンション需要を取り込もうと建設計画を進めた多目的施設「函館アリーナ」(地上3階建て、延べ床面積1万5700㎡、15年8月開業予定)は9月24日、3度目の入札で漸く落札者が決まった。8月6日の初回は入札者ゼロ、9月3日の2回目に入札した二つの共同企業体(JV)はともに予定価格をオーバーした。

3回目に臨むに当たって函館市は予定価格を5億2700万円上積みした。その結果、佐藤工業(東京)と小泉建設(函館市)のJVが2回目の入札と同じ金額の46億1800万円で落札。「漸く業者が決まり、ホッとした」と、市幹部は胸を撫で下ろした。

このほか、広島県呉市庁舎新築工事は8月の3回目の入札で予定価格が13億2300万円上積みされ、五洋建設が、133億3500万円で落札。秋田市庁舎新築工事は6月の初回入札で全業者が辞退したために労務費を14%引き上げて予定価格を上積みしたが、8月の2回目も入札者はゼロ。110億円だった予定価格を116億円に引き上げ、11月15日の3回目の入札に臨むことにした。

業界で話題を集めたのは20年東京五輪・パラリンピックの近代五種競技の会場に予定されている「武蔵野の森総合スポーツ施設」(東京都調布市)の新築工事。7月25日の初回入札は参加予定の七つのJV(メイン棟4JV、サブ棟3JV)の全てが辞退。発注者の東京都が急遽、予定価格を3~8%上積みした結果、10月18日の2回目の入札でメイン棟は竹中工務店JVが104億7700万円で、サブ棟は71億9300万円で鹿島JVが落札した。ただ、2回目の入札に応じたのは、それぞれ落札した二つのJVだけで、しかも落札率(予定価格に占める落札額の割合)はメイン棟が99.6%、サブ棟が98.5%という高水準。「ゼネコン側が強気になり談合全盛期に逆戻りした」と都関係者は自嘲気味に語る。

とはいえ、ゼネコン側が人手不足で四苦八苦なのは事実。「手薄になった熟練技術者を拡充するため、清水建設が戸田建設から破格の高給で熟練工をごっそり引き抜いた」(業界関係者)と噂され、仁義なき下請け争奪戦が始まっているのだ。

外国人労働者に就労ビザを

厚生労働省によると、8月の全国の有効求人倍率は0.95倍と、求人数が求職者を下回っているが、建設作業員に限ると、2.40倍と15年10カ月ぶりのハイレベルに跳ね上がっている。このしわ寄せをもろに被っているのが東電福島第一原発(1F)の廃炉現場である。

汚染水処理作業を請け負っているゼネコン関係者は「安倍首相の『国が前面に』の発言以来、東電の発注内容に無理難題が目立つようになり、現場の士気は落ちている」と指摘する。「1Fの作業が終わっても呑み屋も遊ぶ場所もない。よそに行けば労賃の高い仕事は溢れている。やっていられない」(関係者)というのが作業員の本音だ。

10月28日、福島市の東電復興本社で開かれた記者会見で「人員確保がそれほど深刻なら外国人作業員の採用を考えるべきではないか」と問われた副社長の相澤善吾は「今後の検討課題ではあるが、まだそこまでには至っていない」と答えた。

中小建設業者団体の一部からは「研修生扱いではなく、外国人作業員に正式な就労ビザを出すべきだ」との声が上がっている。背に腹は代えられず、1Fの人手不足をきっかけに外国人作業員を受け入れる日がやってきそうだ。(敬称略)

   

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