「華やかな香り」と「深いコクと旨み」――。「世界最高峰のビール」を追求するサントリーが「ザ・プレミアム・モルツ」をリニューアル。成長を続ける人気ブランドの秘密に迫った。
2012年7月号
INFORMATION
取材・構成 編集部 和田紀央
「少々高くとも、上質なビールが飲みたい」という新たなニーズに応える高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」(以下、プレモル)の躍進が目覚ましい。
「世界最高峰のビールのつくり手」をめざすサントリーが、武蔵野ビール工場内(東京都府中市)に「ミニブルワリー」(ビール醸造所)を開設したのは1989年――。幾多の研究と試作を繰り返し、とことん良質な素材と水にこだわった新しいビールが、遂に完成した。それが2003年に発売されたプレモルである。「欧州産アロマホップ100%使用」「粒選り麦芽100%使用」「天然水100%仕込」という、ちょっと贅沢なビールである。
世界的な食品コンテスト「モンドセレクション」で05年から3年連続でビール部門「最高金賞」(中瓶)を受賞。これは我が国初の快挙であり、プレモルは一躍高級ビールのトップブランドに躍り出た。2010年には累計販売本数が20億本を達成、2011年には8年連続過去最高販売数量を更新した。
破竹の勢いのプレモルは今年3月、中味とパッケージをリニューアル。ビールシーズンの夏を迎え、売れ行きは好調だ。
プレモル発祥の地、武蔵野ビール工場の醸造家で商品開発研究部部長を務める岡賀根雄さんは「プレモルの理想の味わいは(ドイツ語で)ヴァイタートリンケン。何杯飲んでも飽きないおいしさです」と言う。リニューアルでは「『大切な人との日常の幸せな時間を共に過ごすビール』というプレモルの魅力を高め、素材や製法に一層こだわり『華やかな香り』と『深いコクと旨み』を実現しました」と語る。高級感のあるパッケージデザインに紺色のブランドロゴを採用し、さりげなく「SUNTORY PILSNER BEER」の文字を刻した。それは「世界最高峰のピルスナービールをつくる」というサントリー醸造家たちの熱き想いの表れにほかならない。
「よい製品はよい素材から。徹底した素材へのこだわりがビールづくりの第一歩です」(岡さん)。ビールの味、香りと泡もちの源は「麦芽」だ。プレモルは粒選りの「二条大麦麦芽」をふんだんに使用してきたが、リニューアルではピルスナービールの故郷、チェコおよびその周辺国で産出する希少な「ダイヤモンド麦芽」を新たに加えた。
ダイヤモンド麦芽を口に含むと、ふつうの麦芽より複雑な味が広がる。「世界最高峰のおいしさを更に進化させるために、原料から徹底的に見直す中で見つけた素材です。たんぱく質由来の旨み成分が豊富に含まれており、とっておきの麦芽なんです」と岡さんは微笑む。さらに、仕込槽で徐々に麦芽の温度を上げながら、一部の麦汁を2回煮沸する、こだわりの「ダブルデコクション製法」を採用。「いっそう上質なコクと旨みを引き出すことに成功しました」(岡さん)。
もう一つのこだわりはビールの香りや爽快な苦みの源となる厳選ホップだ。欧州産アロマホップの中でも最高級のチェコ、ザーツ種「ファインアロマホップ」をふんだんに使用。その安定調達と品質維持のため、チェコのザーツ地方のホップ農家を支援し、ドイツのハンブルクから低温コンテナで温度管理して輸送する念の入れようだ。「仕上げにファインアロマホップを加える『アロマリッチホッピング製法』を採用し、より華やかな香りと良質な苦みを実現しました」(岡さん)
そして、ビールの約9割を占める水へのこだわり。サントリーのビールは天然水100%使用。地下深くから汲み上げた良質なナチュラルミネラルウォーターを仕込水として使い、適度なミネラル分が「素材の旨み」を引き出している。
プレモルができるまで醸造家たちは徹底して味わいを追求している。その仕込みから発酵、貯酒、ろ過、缶・瓶詰めまで、おいしい製造工程は、都内唯一のビール工場(武蔵野)でヴァーチャル体験できる。仕込釜を間近で見られる見学コースは迫力満点。人気を呼んでいる(w ww.suntory.co.jp/beer/factory/)。
岡さんにプレモルのおいしい飲み方を伺った。「ぜひグラスに注いでお楽しみください。泡の様子、華やかな香りの芳醇さがより一層楽しめます」(岡さん)
サントリーのホームページでは、女優の竹内結子さんがプレモルのおいしい注ぎ方を紹介している。飲む瞬間までビールの泡でおいしさを閉じ込める「二度注ぎ」――。「うまさに本物の輝きがある」ビールの最高峰をお試しあれ。