「原子力コストは安い」は嘘だ!
政府の原子力発電コストは1kwh当たり8.9円だが、筆者の推計では20円を下らない。
2012年5月号
BUSINESS
[特別寄稿]
by 平 智之(民主党衆議院議員)
原子力災害対策特別措置法10条に基づき、東京電力が「全交流電源喪失」を、経済産業省に通報したのは3月11日の15時42分とされているが、本当はもう少し遅い。経産省が東電から受け取ったファクスの発生時刻欄には15時42分とある。つまり、これは通報時刻ではなく現場における確認時刻である。発信元は東電本社で、経産省への着信は16時00分である。
筆者のヒアリングでは、事実上の10条通報が成立したのは15時42分から16時00分までの電話連絡による。その後、国が緊急事態宣言を発令する前提となる15条報告が行われたが、同様の混乱が続いていた。本来は現場から報告されるべきものが、またしても本社から転送された。「1号、2号機の原子炉水位が監視できない」と書かれた報告書は事象確認から経産省着信まで23分を要している。原災措置法に基づく緊急事態通報が混乱していたことは極めて重大である。数分で事態が激変する原子力過酷事故において、事業者からの通報を待つこと自体、危機管理の制度欠陥と言わざるを得ない。海水注入を躊躇したように、事業者には事実の隠蔽や希望的観測の誘因がある。たとえば震度6以上の地震が発生したら、政府の意思によって独自にプラントパラメータをモニターできるような強制介入の仕組みが必要だ。筆者は民主党原発事故収束対策プロジェクトチーム(荒井聰座長)のもとで原子力規制庁の設置法案を担当しているが、こうした緊急時規制の在り方について、いまなお政府と十分な議論がなされていない。
経済社会損失は数十兆円に
今夏、エネルギー基本計画が改定され、将来の原子力依存度も決められる。筆者は、前回(2 010年6月)のエネルギー基本計画策定時において原発依存度アップに断固反対した。経済産業部門政策会議の場で「二酸化炭素を出さないクリーンエネルギーなどという利点は、事故発生時の甚大損害と比較すべくもない」と繰り返し主張した。ところが、当時の会議録に私の発言はなく、気がつけば堂々と依存度50%と定められていた。人類は放射能をコントロールできないという信念から「禁原発」の立場をとる筆者には痛恨であった。今度こそ、推進派と科学的かつ合理的な議論を展開して依存度ゼロを打ち立てたい。当面の問題は原発コストである。
現在、政府内で原子力コストが極端に安く見積もられており、火力、水力より安いのだからベース電源だという主張が罷り通っている。昨年12月に国家戦略室のコスト等検証委員会が公表した報告書(以下、政府推計)では、2030年に新設される発電設備の1kWh当たりの発電コストが原子力8.9円~、LNG火力10.9~11.4円、陸上風力8.8~17.3円などと示され、「原発はやはり安い」というイメージが醸成されている。これに対して、3月5日の衆議院予算委員会第7分科会で筆者の独自推計を提示した。
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