どこも「バートルビー拒絶症」
2012年5月号
[いまここにある毒]
A
I would prefer not to(しないほうがいいのですが)。何を命じても、そう言って仕事をしない。職場の衝立の奥にこもって立ち退きにも応じず、クビにしても動かない。ついに監獄に放りこまれ、膝を抱えたまま餓死してしまう。
五月病の元祖とも言えそうなこの男の名はバートルビー。手に負えないウォール街の筆耕の物語は、『白鯨』の作家メルヴィルが1853年に書いた短編だが、不気味さは類を見ない。無表情の鉄面皮で、肚の内が見えないからだ。
38度線の彼方で「衛星」発射を強行した若き第一書記も、周辺国の迷惑なぞ一顧だにしないバートルビーらしい。国際法違反もそっちのけ、父子相伝の「拒絶」の意思表示である。
対する日本列島も、連日のトンチンカン答弁にあっけらかんの防衛相、デフレの悲鳴に耳を塞ぐ増税不退転の総理、「物価の目途」を目標にあらずと言い張る中央銀行総裁……と「しない ………
