日本野球機構が大もめ「読売・楽天」に責任論

2012年3月号 BUSINESS

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読売・朝日両紙と時事通信社が共同通信社に対抗して、スポーツ記録などの配信会社を立ち上げる動きを見せていると、本誌前号で伝えたが、その前途に早くも暗雲がかかっている。「主要コンテンツとなるプロ野球データを優位に受けられるよう読売幹部らが日本野球機構(NPB)に工作を仕掛けたのですが、あえなく頓挫したのです」(NPB関係者)

NPBは1989年にプロ野球の試合結果やチーム成績、個人の打撃成績などを一括管理するデータベースシステム「BIS」をスタートさせた。その運用を電通に委託し、共同通信社を通じて速報データを各報道機関に提供している。ところが「運用・配信が独占排他的」とする一部の声に押されて、新システムを2013年から導入する計画が浮上。このためNPBは12年限りの契約短縮を申し入れたが、電通はコンピューターのリース期限である14年までの3年契約を主張したため紛糾。NPBは電通に対して、単年度契約に応じるよう東京地裁に仮処分を申し立てる強硬手段に打って出た。

「NPB内に設置されたBIS見直し小委員会の座長である楽天のオーナー代行と、読売の取締役社長室長が外部コンサルタントを使って一連の動きを仕掛け、法的措置を主導しました。ところが、肝心のデータ処理を巡って、とんでもない問題が持ち上がったのです」(前出同)

BISでは、球場に派遣した公式記録員がルールブックに則ってスコアブックに記載したデータを入力する取り決めがあり、データの品質保証に関する要だったが、新システム計画を進めるために、最低1シーズンは外部のデータ会社Dに丸投げすることにしてしまった。ところが、D社が社屋内でテレビ観戦しながらアルバイト社員にデータ入力させている実態が判明し、NPB内は大もめになった。関係者によると昨年末、NPB幹部と公式記録員との間で激しいやり取りがあったという。

記録員「D社のデータはあまり信頼できないのではないか」

幹部「確かに評価は低い」

記録員「どうチェックしているのかわからない記録を誰が受け取るのか。公式記録と認定されたデータを配信しなければBISの信用は失墜する」

結局、12年のデータ配信すら危ういと判断したNPBの加藤良三コミッショナーが仮処分申し立ての取り下げを決定。新システム計画を白紙に戻し、現在、電通と従来通りの3年契約で交渉を進めている。

電通は3年契約なら受け入れる方針だが、「実際にシステムを運用している担当者は楽天と読売の強引さに憤り、契約してもシステムが運用できない可能性もある」(パ・リーグの球団関係者)。事態は深刻だ。

「加藤コミッショナーはデータ処理の実態を正確に知らされておらず、読売と手を組み『仮処分はすんなり認められる』と強調する、元弁護士の楽天オーナー代行の口車に乗せられた」と酷評する向きもある。

BIS小委員会には中日、ロッテ、ソフトバンク、阪神の4球団もメンバーに加わっており、読売・楽天の「暴走」に待ったをかけた格好だ。一方、電通に乗り換えられたD社はNPBに多額の違約金を請求する始末。読売・楽天の責任問題になりかねない。

   

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