マイページ | オンライン会員登録 | オンライン版について

定期購読のお申し込み | 月刊「FACTA」のご案内 | よくある質問 | ご意見・お問い合わせ | サイトマップ

「補助金で私腹を肥やす」某代議士同族会社

2012年3月号 BUSINESS

愛媛県宇和島市に盛運汽船という海運会社がある。愛媛4区選出の自民党衆院議員で元総務副大臣の山本公一氏が、かつて社長を務めていた。現在は代議士の妻が社長で、長男が株式の大半を保有しているとみられる。典型的なファミリー企業である。

高速船2隻と貨客船1隻を保有し、宇和島と離島の日振島などを結んでいる。日振島は平安時代に時の朝廷に対して反乱を起こした藤原純友が本拠とした島で、夏はキャンプや海水浴客、釣り客らで賑わう。ただ、人口は500人たらずで赤字航路になっている。

離島への運航で赤字はやむを得ないにしても、盛運汽船の経営はひどすぎる。売上高が1億3千万円しかないのに営業赤字が1億7千万円。3億5千万円の債務超過に陥っていながら役員報酬をしっかり支払い、昨年11月にはバリアフリーの新高速船「しおかぜ」まで就航させた。

それを可能にしているのは国や愛媛県などから受け取る年2億円前後の補助金だ。地域住民の足を確保するため、船会社やバス会社に補助金を出す例は珍しくないが、2億円は桁違いに多い。普通は数百万円から多くても数千万円である。しかも新造船は鉄道・運輸機構が共有という形で建造費の9割を負担している。これも国の補助金が原資になっている。

盛運汽船がそのカネを活用して運賃を安くしたり、増便したりしているのならまだわかる。現実には宇和島―日振島間は片道1990円かかる。愛媛・八幡浜から大分・臼杵までのフェリーの2等運賃(2250円)と大差ない。ダイヤにも問題がある。3航路で一日1~3往復しかなく、宇和島から日振島に渡る便は午後3時半が最終。島民からはかねがね「運賃の値下げ」と「最終便の出発時刻繰り下げ」を求める声が出ている。

では多額の補助金を何に使っているのか。国土交通省が昨年3月にまとめた「日振~宇和島航路改善計画策定に関する調査報告書」によると、労務費と人件費に1億5400万円かかっていた。しかも報告書を基に計算すると、2600万円が役員報酬として支払われていた。債務超過の企業であれば、通常は役員報酬など支払えない。それどころか、経営者が私財を提供しても不思議ではない。盛運汽船は山本代議士一族が補助金を私物化し、社員にも厚待遇の蜜を吸わせている。

国交省の報告書は「航路補助金がなければ明らかに継続企業として成り立たない」「債務超過の解消は現実的ではない」と断じている。そのうえで、「人件費削減に向けた経営努力が必要」と指摘している。

メーンバンクの愛媛銀行には間もなく火の粉が降りかかってくるだろう。融資額に見合う形で代議士の自宅に4億7千万円の根抵当を設定しているが、地元の不動産に明るい人物は「豪邸ではあるが1億円ちょっとの価値しかない」と見る。銀行が不十分な担保で債務超過会社に貸し続けているとしたら、頭取や融資責任者は背任罪に問われる恐れもある。金融庁の検査を待ちたいところだ。

山本代議士は、自民党が政権を奪回した暁には国交大臣を狙っているといわれる。だが自身のファミリー企業が補助金で私腹を肥やしているとしたら、とてもその資格はない。さっさと引退すべきではないか。