高齢者を食い物「H4O未公開株事件」

2011年3月号 BUSINESS

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相次ぐ未公開株トラブル。高齢者を食い物にするブローカーの代表的な手口が被害者転がしだ。そんな中、海外のペーパーカンパニーを駆使する奇怪な人脈が浮上、ある大物官僚OBの名前まで飛び出している。

焦点となる人脈が根城とするのは東京・芝の雑居ビル4階。昨年春までそこには水素結合水なる健康飲料を販売する「H4O」という会社が入居していた。「ジャイアンツの元投手や女優も愛飲者。上場すれば株価は2.4倍以上になる」との触れ込みで、同社は未公開株を売りまくった。売り値は1株33万円だった。

ゆうちょ銀行に開設された口座には2008年12月から09年6月にかけて、続々と全国から入金がなされ、すぐに現金で引き出されていった。ひとしきりカネを集めたH4Oは昨年3月末で「株式公開準備室」を閉鎖するとの通知を投資家に突然送付。怒った一部投資家が裁判に訴えているが、もはや後の祭りだ。

この間、H4Oの蔭山昌彦社長が関係する「アンビリカル・キャピタル」なるケイマン諸島籍のファンドは、不公正ファイナンスの温床である「ハコ企業」の1社、総和地所(昨年7月上場廃止)の株買い占めにも登場。H4O株の勧誘をしていたブローカーの中には兵庫県警が摘発した「イー・マーケティング事件」の関係者もいたとされる。

H4Oが人知れず姿を消した後、入れ替わりに同じフロアに入居したのは「R&R」なる一般社団法人と「ジャパニーズ・ターンアラウンド・キャピタル」(JTC)なる英国ロンドンに登記された法人だった。現地の登記資料によると、JTCはR&Rとその理事の出資により昨年2月に設立されたらしい。

昨年夏頃、そのJTCが紙くず同然のH4O株を抱え込んだ投資家にある通知を行った。ケイマン諸島に登記されたH4Oの持ち株会社株とJTC株とを交換するとの勧誘である。不良化した消費者ローン債権への投資を謳うJTCは設立直後に英国の私設市場「プラス」に登録していた。いかにも被害回復のチャンスと思わせる話だった。

しかし、JTCから売り出しなどの実務を依頼された新興証券会社はH4Oに関する未公開株トラブルの話を察知、即座に交渉から降りた。このためJTC株のプラス市場での取引実績はゼロ。この怪しげな株式交換話については、関東財務局も関心を持っている模様だ。

一連の話でキーマンと思われるのが滝島恵一郎氏。同氏の実父は1960年代に武州鉄道の敷設を巡る疑獄で贈賄罪に問われた滝島総一郎氏。恵一郎氏本人は80年代に「大日産業」を率い、ひと頃は若手経営者の有望株と持て囃された。が、仕手グループ「三洋興産」による大掛かりな循環取引に巻き込まれ、大日産業は86年に倒産してしまう。

その後、滝島氏は映像関連の会社などを興したが失敗。揚げ句、01年6月に代表取締役となった先は「九段ベンチャーキャピタル」という当時有名な問題企業だった。オーナーの大浦清一氏は仕手筋の中江滋樹氏とも親密で、予備校経営に乗り出したものの、裏口入学まがいの預託金トラブルを起こし、かたわらで有名地上げ物件に大金を注ぎ込んでいた。滝島氏は06年11月に2回目の個人破産をしている。

実は、JTCとR&Rの役員には大蔵省OBの中島義雄氏と日本興業銀行元常務の玉置修一郎氏も名を連ねている。かつて事務次官候補といわれた中島氏は京セラや船井電機の役員を経て、現在はセーラー万年筆の社長。中島氏は困惑気味だ。

「国内外の金融情報が入り、セーラー万年筆の資金繰りに役立つと思い、役員に就任した。スタッフとしていた蔭山氏からH4Oの事件は解決済みと一度説明されたことがある。株式交換の話は知らなかった。名義貸しみたいなことをしているのも法令遵守上の問題があるので、昨年9月上旬に辞任を申し出た」

そう話すのだが、果たして真相はいかに……。

   

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