謙虚な記録者の静謐な足跡

『戦禍のアフガニスタンを犬と歩く』

2010年6月号 連載 [BOOK Review]

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ある日の午後、スコットランドを歩いていて「このまま歩き続けてはどうか」と思ったのが、徒歩旅行のスタートだったという。イランからネパールまで歩く計画を立てたが、タリバン政権に入国を拒否され、アフガニスタンは歩けなかった。ところが2001年のクリスマス前、旅を終えたネパールでタリバン政権が崩壊したとのニュースを聞き、急遽アフガンにとって返し、02年1月、西端の都市ヘラートから東端のカブールまで、著者は一直線に歩き始めた。タリバン政権崩壊からわずか2週間後、タリバン支配地域も残り、部族間の紛争も相次いでいた。しかも真冬の4千メートル級の山を越えての徒歩旅行である。当然、大冒険譚を期待しがちだが、予想はあっけなく覆される。いや、実際は地雷が敷設された道を歩き、背後から発砲され、赤痢に罹り、タリバンには殺されかけ、深い雪原で死を覚悟するなど、危機の連続だ ………

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