荒井 聰(前衆議院議員)

「友愛」とはヒューマンな政治

2009年8月号 連載 [如是我聞]
by W

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荒井 聰

荒井 聰(あらい・さとし)

前衆議院議員

1946年北海道生まれ。東大農学部卒業。農林水産省入省。2度の北海道庁勤務を経て93年、衆院議員に初当選。民主党役員室長、党国対委員長代理などを歴任。当選4回後、2007年道知事選に挑むも落選。現在、民主党北海道第3区総支部長として国政復帰に向け奮闘中。

写真/菊池雅之

「閉塞感が日本を覆いつくし、薄氷の足下には、再起のチャンスどころか生死のはざ間がぽっかりと口をあけています。これ以上、政治の不作為のために泣く人を作ってはならない……。私はそう訴え続けています」

「政府は『景気底打ち』を宣言しましたが、北海道経済はどん底です。雇用者に占める非正規労働者の割合が4割になり、5月の有効求人倍率は0.31%。新自由主義的な小泉改革は、国際競争力のない地方経済を疲弊させました。最も痛手を被ったのが沖縄や北海道です。自民党が安全網を整備することなく、弱肉強食社会へと急激に舵を切った結果、そこから落ちこぼれた人たちが絶望し、世界で最も人口当たりの自殺者が多い社会を作ってしまいました」

「5月27日、鳩山民主党代表との初顔合わせの党首討論で、麻生首相は友愛を説く鳩山代表を『学者や評論家のようだ』と切って捨てた。『友愛』は本当に甘っちょろいのか? それは誤解というものです。友愛主義の原点は、パリ市民が『自由、平等、友愛』を叫び、三色旗を掲げてバスチーユ牢獄を開放したフランス革命に遡ります。ちなみに三色旗の赤(血の色)はフラテルニテ(友愛)を表します。友愛をこきおろすのは、血の大革命の歴史を知らぬ人です」

「『自由』が過ぎて極端な格差社会を生み、挙げ句、世界を大恐慌に落とし込んでしまった。『平等』が過ぎた共産主義国では、悪平等が蔓延し、混乱のうちに国家が解体していく。いずれも友愛の理念が欠けていたためではないでしょうか」

「安全網なき新自由主義で日本社会は根底から変わってしまった。国家の危機を乗り切るには『共助の精神』、つまり友愛理念の実践が必要です。実はこの機能は、古来から日本の村落共同体では色濃くありましたが、今の社会には一番欠けているものなのです」

「小泉改革の負の遺産は甚大で、安全網をすべて財政負担で整備することはできません。NPO法人や非営利セクターの役割を拡大し、社会保障を経済政策としても成り立たせていくこと。それが政治の課題です」

「最近、地域医療を担って92歳で亡くなった老医師の言葉が胸に沁みました。『私はヒューマンに生きて、ヒューマンに仕事をしてきた。あなたにも人間味のある、人間性豊かな政治家になってもらいたい……』と」

「この十数年間『日本人らしさ』『日本人の良さ』という価値観が大きく崩れようとしています。教育水準の高かった子供たちの心は荒び、世界に誇る治安も悪化、経済を支える中流階層も激減しています。政治も、弱者に光を当てる本来の機能を果たせていません。これまで疎かにされてきた身近な政策を充実させる時が来ています。そのためにも一日も早く政権交代を実現し、政治を立て直したいと思います」

   

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