ネットの遊び場SNS 進化迫られる「ミクシィ」
課金型モデルのグリーがマザーズに上場して猛追。時価総額で抜かれたミクシィがめざす「フェースブック」とは。
2009年2月号
SNSは、ヤフーのようなポータル(玄関)サイト、グーグルのような検索サイトに次ぐ、第三のインターネットの入り口と目される。ポータルや検索が入り込めない「閉じたネットワーク」の中で利用者同士が交流する場を提供するからで、そこでは利用者の特性に応じたきめ細かな広告が可能とされ、新しい広告メディアと期待されてきた。
しかし、現状ではSNSはポータルやニュースサイトに比べPV(ページビュー)あたりの単価が著しく安い。広告に載せるのは人材サービスやコスメが多く、ナショナルクライアントの獲得には苦労している。
「新聞やテレビの広告が軒並み苦戦しているように、ネットメディアもこの不況で広告依存型では行き詰まる可能性が高い。ネットサービスの収益モデルは大きく分けて広告、課金、EC(電子取引)だが、今は課金かECを主力とする企業が投資対象としては魅力的」(新興企業投資担当者)との声は多い。
今のところミクシィの広告事業の基盤はまだ固い。08年10月には広告事業の好調を受けて09年3月期の業績予想を上方修正している。巨大な会員数の意見をマーケティングに活用するため、ミクシィと組んで開発されたカップ麺や清涼飲料水などを店頭で見かけることも多くなってきた。しかしグリーの猛追と高収益モデルに、うかうかしてはいられなくなった。
閉じられたSNSを開放
もっとも、ミクシィは課金事業の拡大を急務と捉えているものの、グリーと同じ方向だけを模索しているわけではない。「ミクシィは米国の『フェースブック』のような世界規模のSNSの進化の流れを汲んだ発展を狙っています」とあるネット広告代理店の幹部は言う。
世界のアクセス数の上位10サイトのうち、SNSは05年時点で「マイスペース」(ニューズ・コーポレーションが買収)だけだったが、08年にはフェースブックなど6サイトが食い込んでいる。急成長するフェースブックの月間訪問者数は近く2億人に達すると見られる。
フェースブックが既存のSNSと違うのは、誰もが自由度の高いアプリケーション(応用ソフト)を提供できること。開発者向けに開かれた開発環境を提供して、外部企業と水平分散事業を展開するモデルで、これはSNSをパソコンでいう基本ソフト(OS)と見立て、外部企業からさまざまなソフト提供を促す仕組みを用意することだ。閉じられたSNSを開放し、一大市場に仕立てようとしているわけだ。
その将来性を見込んでマイクロソフトが提携、買収を検討しているともいわれる。すでにフェースブックなどのSNSにソフトを提供する新興企業数社が大規模な資金調達を完了済み。「この大不況がなければフェースブック関連のソフト会社の上場話が出てきてもおかしくない」(米新興企業幹部)という。
ミクシィも動きだした。昨年11月27日に、サービスモデルを大きく変える計画を発表した。12月から開発環境の開放を進め、今春には同社のSNS関連データを活用してさまざまな端末やサービス基盤にソフトなどを開発できるサービスを開始する。知人の招待がなくては原則利用できなかった「招待制」も撤廃、登録制にするとしている。会員が1500万人もいては閉鎖性に意味がなくなってきたからだろう。
ただ、日本には携帯経由のSNSが主流という特殊性がある。先の米新興企業幹部は「携帯業界はキャリアによる垂直統合モデルだけに、開放的な開発環境のSNSが受け入れられるかは未知数。ミクシィもどこまで開放的な開発環境やデータを提供できるのか。新興企業のソフト開発を支える投資家の規模も米国と比べて小さい。夢は壮大だが、「日本版フェースブック」は離陸できるのだろうか。
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