編集後記

2008年10月号 連載

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ロードムービーが好きだ。荒寥とした赤茶けた大地をどこまでも走る無人の道。錆びた車のサイドミラーに蒼穹と土埃が映っている風景が、なぜか無性に懐かしい。アメリカの大平原を独りで疾走した経験なんてないのに、不思議とデジャヴ(既視感)に襲われる。『イージー・ライダー』『ペーパー・ムーン』『パリ、テキサス』『アメリカ、家族のいる風景』『イントゥ・ザ・ワイルド』……挙げていけばきりがない。▼行き先もなく連れもない旅。やみ難いほどの憧憬を覚えるのは、放浪癖があるからだろうか。民俗学の祖、柳田國男にも生来その癖があったらしい。幼時ふっと神隠しにあい、近所総出で捜索したら、隣村をすたすた歩いていたという。遠方に親戚がいると空想して歩き始めたというから、トランス(入眠幻覚)に陥っていたのだろう。実は私にも経験がある。5歳で家出した。▼何が気にくわなかったのか覚 ………

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