2008年7月号 DEEP [ディープ・インサイド]
新聞・テレビはほとんど報じなかったが、政界動乱の主役である民主党の小沢一郎代表にとって大きなダメージとなる判決が6月4日に下った。いわゆる小沢氏の不動産問題を取り上げた「週刊現代」の記事で名誉を毀損されたとして、小沢氏と民主党が講談社と著者の長谷川学氏らを訴えていた。その控訴審判決で、東京高裁(柳田幸三裁判長)が「記事は真実であり名誉毀損に当たらない」として1審の東京地裁判決を支持。小沢氏側の請求は棄却され、講談社側が勝訴したのだ。
週刊現代(06年6月3日号「小沢一郎の“隠し資産”を暴く」)は、小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」が都内などにマンション10戸、6億円以上(その後、さらに買い増しして現在は10億円超)を所有していることを調査報道で明らかにし、その全てが小沢氏名義であることなどから、小沢氏の実質的な「隠し資産」ではないかと追及。この記事に小沢氏は「『絶対に許さん!』と激怒した」(民主党関係者)という。
その怒りの背景には、この問題が自らの致命傷になりかねないとの恐れがあったようだ。実際、記事が出てから約半年後、政治家の事務所費問題にからめて新聞・テレビが小沢氏の不動産問題を一斉に報道。国会でも大問題となり、小沢氏は弁明に追われた。そして昨年、政治資金規正法が改正され、政治資金管理団体が新たに不動産を所有することが禁じられた。追い込まれた小沢氏は「面倒だから不動産を処分する」と明言した。
「2年前、小沢氏はこの問題をマスコミに追及されてはたまらないと思ったはず。見せしめに週刊現代を告訴すれば牽制できる、と考えたとしても不思議ではない」(前出の関係者)
昨年1月に産経新聞がこの問題を新聞として初めて取り上げたとき、小沢氏周辺が「週刊誌を告訴したことを知らないのか?」と憮然としていたという話もある。
いまや「永田町の不動産屋」と揶揄されるようになった小沢氏は、控訴審で「不動産は陸山会のものだ」と主張したが、判決は「本件各マンションが陸山会のものであると断定することはできない」と切り捨てた。
小沢氏はいまだに約束した不動産の処分を実行していない。今後も小沢氏のアキレス腱になるだろう。