日経ヴェリタスが5月中に「減りだす」理由

2008年5月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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日本経済新聞社が3月16日、鳴り物入りで創刊した投資家向け週刊紙「日経ヴェリタス」。3月末の部数は14万部強と目標の10万部を大きく上回ったが、内実はそう胸を張れる状況ではない。

第一に総部数のうち6割が最短の10週間(2カ月半)だけ購読する「試し読み」の読者であること。5月18日号までの試読期間中に読者の心を惹きつけないと、部数はあっという間に半分以下にはげ落ちる可能性がある。

しかも、この部数はかなり強引に「つくった」形跡がある。インターネットの「2ちゃんねる」には「サンプル版を請求しただけなのに、『購読を申し込んだ』ことにされた」といった趣旨のクレームが掲載された。

また、記者出身の日経幹部が旧知の大企業経営者を訪問し、「50部とってほしい」と強く要請。この企業は日経の影響力、つまりは新聞報道での後難を恐れて、やむなく25部だけ購読に付き合ったと漏らす。

第二に個人の読者が7割を占め、法人読者が3割しかいないこと。個人投資家が中心ということは、抽象論を言えば日本の株式市場の健全化を物語るが、新聞を売る側からすると、これはつらい。法人なら経費で落とせるうえ、契約の見直しは半年~1年単位。内容に多少不満があっても、ある程度は惰性で続くが、個人は自腹であり、面白くなければさっさとやめてしまう。

第三にタイミングの悪さ。世界の株式相場が大きく動揺、日本の株価は近年にない低水準という最悪の環境下での創刊となった。

肝心の内容も、マクロとミクロ、海外と国内など金融情報のデパートのように何でも揃っているが、総花的で食い足りない。ビジネスマンの目から見れば、1月に事実上廃刊した「日経金融新聞」とさして代わり映えしない。銘柄の探しやすさを狙った新機軸の「五十音順株式相場表」など数表欄に18ページも割いているが、パソコン上でリアルタイムの情報が手に入る現代に、1週間分のまとめを載せる意味があるのだろうか。

投資家が欲しているのは、むしろ個別企業を深く掘り下げた経営分析や、底流を探るトップ人事、業界内での実力比較など、泥臭いミクロ情報。記者が足と知恵と人脈を駆使して稼ぐしかない情報ばかりだが、いずれも物足りない。ある消息筋は新聞の題字を「日経ベリタス」でなくて「日経ヴェリタス」にしてよかったと苦笑する。「ベリタス」は「(部数が)ヘリダス(減り出す)」に通じるからという。

日経社内に「何が何でもヴェリタスを盛り立てていくんだ」という熱気が感じられないのはなぜか。わが国では珍しい横組みタブロイド紙という小洒落た体裁の「仏」はできたが、投資家ニーズの徹底追求という「魂」が入っていないからだろう。

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