「ミステリー・ギャップ」に寡黙たれ

2007年7月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第15回]

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「われわれが蒐(あつ)める情報は、その多くが役立たない代物だと言っていい。一般の情報とさして代わり映えがするわけじゃない。だが、インテリジェンスを差し出す相手は、一般の人々ではなく、国家なのである。国家に限らずとも、自ら金で買う情報を信じ、金を使わない情報は疑ってかかる」米ソの冷戦が終わって間もないころのことだった。東西の両陣営が繰り広げる情報戦の素顔を描いた作家ジョン・ル・カレは、伝説のスパイ・マスターを『影の巡礼者』に今一度登場させた。イギリス秘密情報部の研修所にジョージ・スマイリーを招いて、冷たい戦争が幕をおろした時代に情報士官となる後輩たちを前に、クレムリンという名の蠍(さそり)と対峙した情報戦の内実を存分に語らせた。それは冷戦を野辺に送る挽歌だった。*ジョージ・スマイリーのひそみに倣えば、国家はシークレットを扱う者を軽んじ、ミ ………

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