英国の“原罪”は奴隷貿易200年前の謝罪求められる

2007年5月号 GLOBAL [グローバル・インサイド]

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過去の贖罪が終わらないのは、日本の従軍慰安婦問題だけではない。英国で奴隷貿易廃止法が成立して200周年を迎えた3月25日、英国各地やガーナなどで記念式典が行われたが、会場のひとつ、ウェストミンスター大寺院に黒人男性が乱入、エリザベス女王のすぐ近くで謝罪を求める場面が全国に生中継されてしまった。

昨年11月、ブレア首相は黒人系の「ニュー・ネーション」紙に寄稿、奴隷貿易に「深い悲しみ(Deep sorrow)」を表明。今年1月には奴隷貿易廃止200年を記念するレセプションを官邸で開いたほか、3月中旬に訪英したガーナ大統領との会談で、奴隷貿易について「遺憾(I'm sorry)」との見解を示した。そして25日のガーナでの記念式典向けVTRメッセージでは「奴隷貿易に英国が演じた役割とそれによる人々の苦しみに英国は深い悲しみと遺憾(Deep sorrow and regret)の意を表したい」と述べている。

しかし奴隷だった側への配慮が十分でないとの非難や、改めて英国の責任を追及し、政府の謝罪や賠償金を求める声も強まっている。ヨーク大司教(英国国教会ナンバー2)は黒人系だが、記念式典に先立ち「かつてモノのように人間を奴隷として売買した英国は正式に謝罪すべきだ」と首相に発言。ロンドンのリビングストン市長も奴隷制に果たしたロンドンの役割を正式謝罪し、すでにフランスや、米バージニア州、英リバプール市、英国国教会が謝罪したのだから「英国政府が謝罪を拒否するのは卑劣」と批判した。

英国の世論は割れている。BBCのウェブサイトに寄せられた視聴者の意見をみると、かつての奴隷の苦しみを思い、真摯に反省する声も多いが、200年前の悪行に今の世代が謝罪したり、賠償金を払う必要はないと考える人もかなりいる。首相官邸は「ブレア首相は歴代首相の誰よりも強い遺憾の意を示した。今は未来に目を向けるべきだ」としている。

   

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