号外速報(6月25日 11:00)
2025年7月号 POLITICS [号外速報]
東京都議選の練馬区でトップ当選した藤井とものり氏の応援に駆け付けた蓮舫氏
本当に久しぶりの街頭でした。
多くの立憲民主党・都議選候補者が自治体議員、都議になった時からの仲間だったこともあり、彼彼女たちの挑戦を少しだけ後押したい想いでマイクを持ちました。
候補者の努力で都議会の議席が増えたことは嬉しかったです。
街角で私に頷いてくれる方、笑顔をくださった方、手を振ってくれた方、がんばれとエールをくれた方。何より「戻ってほしい」との声に励まされました。
2025年6月24日、私は立憲民主党から今夏に予定される参議院議員選挙の全国比例候補者として公認されました。
昨夏の挑戦から11カ月が過ぎようとしています。私の政治人生に一旦ピリオドを打ったあの夏を少しだけ、振り返らせてください。
2024年5月27日、都知事選挙への出馬意向を表明してから7月7日の投開票日までに都内で行った街頭演説はそれまで経験したことのない熱を帯びたものでした。
若い人が、多様性を求める人が、変えてほしいと声をあげる人が、日を追うごとに私の街頭演説に集ってくれる人々は増え、千人単位の聴衆の前で話す選挙でした。
通常の国政選挙ならば『勝利』を確信できる手応えにもかかわらず「蓮舫が伸び悩んでいる」とのメディアの世論調査や各政党の独自調査が耳に入ってくるたびに、候補者として日々向き合う街頭演説の様子とそうした調査結果の落差にただ焦燥感を持った2024年の夏でした。
そして、私が初めて選挙で負けた夏でした。
「一旦、ピリオドを打ちたい」
選挙後、SNSで発信した言葉は率直な本音でした。悔しいとか不徳の致すところとか断腸の思いといった、自身を取り繕ういわゆる政治用語が思いつかないほど心が空っぽだったのです。
東京都議選の足立区で2度目の当選を果たした銀川ゆい子氏の応援演説に立つ蓮舫氏
2004年の参議院選挙から4期連続当選、2回目の選挙以降は選挙区の東京を離れ全国の仲間の応援に走り回る日々を送ってきた私にとって「落選」という結果をどう受け止めていいのか、頭も心も空っぽになってしまい「ピリオド」という言葉しか思いつかない状態でした。ピリオドの先に何があるのかも見えませんでした。
選挙の翌日から「予定が何もない日々」というのも初めての経験です。
SNS動画配信やバラエティ番組への出演依頼、各種メディアの取材依頼もいただきましたが、自身を奮い立たせることができず基本的にお断りをしていました。
そんな最中で身に染みて温かったのは勉強会への誘いや会食への声がけをしてくれたジャーナリストの仲間や古い友人たちの存在でした。
国政、都政、選挙、永田町という世界ではなく、彼彼女らが向き合っているジャンルから新たに学ぶことを教えてくれた新鮮な時間、図書館に通って好きなだけ本を借りること、ドキュメンタリー番組を夜中まで観られること、そして愛犬と選挙後に急速に介護が必要になった老猫との日々は静かで、意外に豊かで愛おしい時間でもありました。
「選挙に負ければただの人」とはよく言われますが、最も顕著なのは政治家から連絡がこなくなることでした。仲良しと思っていた政治家、何度も応援に請われた政治家、飲み仲間で語っていた政治家はたくさんいましたが、数人を除いてラインもメールも電話もなくなりました。
立憲民主党の野田佳彦代表の言葉、「戦友で盟友」の辻元清美代表代行の有難みに救われた蓮舫氏
終わった人と見られていることが実は一番きつかった中、声をかけ続けてくれたのが辻元清美さんです。「負けた蓮舫を初めて見た。とても大事なことなんじゃないかなと思う。政治家は挫折から学ぶことが大きい。負けた蓮舫はさらに強くなると思うんです」、落選時に私にエールをくれた彼女は、その後も定期的に連絡をくれました。
「私ほど負けた経験が豊富にある人はいないから、ご飯食べようよ」と声がけしてくれるその言葉に涙腺が何度緩んだか――。
彼女が衆議院議員で私が参議院議員の時、予算委員会で質問するための準備は詰めて詰めて用意周到に追い込んで作成するから、2人とも数キロ痩せるほど。
「生きてる?(笑)」なんてメール交換が当たり前だった戦友で盟友の有難みが私を救いました。
新聞を読もう、ニュースを見よう、国会中継をチェックしようと、現実逃避していた自分を猛省。トランプ政権の誕生とウクライナやガザ地区の窮状の今後などの世界情勢、総選挙を経た少数与党の今後、日本経済の現状と行方にようやく向き合うことができました。
昨夏から送る静かな日常でしたが、電車やバス移動の時、スーパーで割引商品をゲットする時、犬友と会話をしている時に耳にするのは物価高が家計や生活を本当に直撃している現実でした。
米価格暴騰に対しての無策、後手後手な政府の対応に憤りを覚えました。
新人議員一人に10万円の商品券をポケットマネーで配ったことを法的に問題ないとする石破総理の政治とカネの感覚には言葉を失いました。
この総理だからこそ命を守る政策から命を削る政策に転換する高額療養費負担増への見直しを提案したのだと理解したほどです。
衆議院における少数与党は国会のありようを変えています。どんな法案でも、どんな予算でも与党多数で押し切る景色が変わり始めました。
高額療養費見直し撤回、能登地震復旧復興の補正予算増額見直しの実現は国会の熟議と野党のまっとうな提案が反映され、政府を動かしました。
選択的夫婦別姓は今なお反対論が強い中でも止まっていた自民党内の議論が動き出しました。
将来世代の低年金を防ぐための年金制度改革法案も与野党修正合意となりました。
昨夏から過ごしてきた生活の中で触れ合う人々から私が感じたこと。それは、生活に追われている、仕事に埋没している、育児と仕事で忙殺されている、介護でいっぱいの日々を送る方々が政治に積極的に関心を持つ余裕がない現実です。その方々を「無党派」と括るのは違うと痛感しています。
無党派、政治への無関心者が多いから数の力で政権に都合の良い政治を通すことを許してはいけないと強く思いを持っています。関心を持てないけれど、日々の生活を良くしてほしいという声に政治は真摯に応えるべきだと再認識しています。
「朝顔の花が開くのは夜の冷たさを知っているから、朝陽を浴びて開花するんだよ」
野田佳彦さんが落選時に植物学者から聞いた話に、いまほど心打たれる時はありません。
一旦のピリオドから私は前に動き出したいと思います。
衆議院に続いて参議院でも与党過半数割れとなれば、より国会での熟議が進みます。自民一強、数の力ではなく議会の力が試されます。
その場で、れんほうの国政での20年間の経験を使ってほしいと思います。
私は声を上げ続けます。