2026年11月号 BUSINESS

ソニーFGの遠藤俊英社長(HPより)
金融庁は10月9日、プルデンシャル生命に約3カ月の業務停止命令、親会社のプルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン(PHJ)に業務改善命令をそれぞれ発出した。新聞各紙は騒ぎ立てたが、「サプライズ」はむしろ別のところにあった。
グループ会社のジブラルタ生命保険に対しても、プルと同じく3カ月の業務停止命令を出したのだ。ある大手生保幹部は「立ち入り検査にも入っていない会社に『いきなり停止命令』なんて聞いたことがない」と目を剥く。
ジブは、破綻した「協栄生命保険」を引き継ぎ、再建する形で2001年に営業を開始。旧AIGエジソン生命などを吸収し、現在の総資産は約9兆6800億円。業界10位前後の中堅生保だ。
プルが1月16日に大規模な金銭不祥事を公表した際、実はジブも元社員1人が顧客19人から計約8900万円の不正受領を発表した。ジブの補償委員会が立ち上がると、顧客から「私も被害にあった」との通報が相次いだが、経営陣は当事者意識が乏しく、営業自粛などの対応を取らなかった。
ジブは常日頃、「負け組の寄せ集め。営業の質が低い」と、プルから見下されていた。歪んだ劣等感から「絶対的な兄」の凋落をほくそ笑んでいた面がある。我が身が標的になっているとは、最後まで気がつかなかったようだ。
一方、当局の検査部隊はプル、ジブ対応に区切りをつけ、ソニー生命保険に矛先を向ける。有力な金融庁OBは「ソニーはジブ以上に当局の本気度を見誤っている。いまだに営業自粛もせず、悪質な社員を放置している」と憤る。
金融界は目下、親会社のソニーフィナンシャルグループ(FG)の遠藤俊英社長(67)の去就に注目している。元金融庁長官からの天下り社長であるうえ、2017年~18年に金銭不祥事が相次いだソニー生命に立ち入り検査を行った際の監督局長だったからだ。この時は結局、「無処分」となった。金融庁内にも「遠藤さんは当局の恥。警察が泥棒になったようなものだ」と酷評が消えない。
ソニー関係者は「良くも悪くも彼は『お飾り』。監督責任は免れないが、極悪人は別にいる」と言う。2015年~23年までソニー生命社長を務めた萩本友男の存在だ。それまで歴代社長はソニー本体からの派遣だったが、萩本は生え抜きのライフプランナー(LP)として、初めて社長に上り詰めた。
営業現場を知り尽くした萩本こそが、契約獲得に極度に偏した組織文化を作り上げ、不祥事多発の土壌となった。先述の通り遠藤監督局長時代の立ち入り検査は処分なし。結果、8年間も社長を続け、最近まで「顧問」に居座った。関係者は「彼を信奉するLP上がりの一派が組織を牛耳り、抜本的な改革を拒否し続けている。『萩本派』の一掃が当局検査の最初の標的になるだろう」と言う。
同社には別の危機もある。国債運用で膨らんだ3兆2千億円の含み損だ。更なる金利上昇で含み損は増え続け、万一保険契約の「大量解約」が発生したら、債券の強制売却を迫られそうだ。不祥事による信頼低下や、顧客のリテラシー向上や「保険から投資へ」の流れもあり、この先、解約リスクは高まるばかりだ。
ソニーFGの売り上げの90%はソニー生命。一時はSBIホールディングスなどへの身売りが取り沙汰されたが、頓挫したようだ。 「含み損と行政処分という二つの爆弾を抱え、火中の栗を拾うところはないだろう」(大手証券部)
約17%のソニーFG株を保有するソニーグループが、金融に関心を失う中、FG傘下の「ソニー銀行や損保を切り売りして急場を凌ぐのでは」とも囁かれている。