号外速報(6月11日 14:20)
2026年7月号 BUSINESS [号外速報]

27期連続の営業赤字に苦しむ時事通信社――。
6月27日に開かれる株主総会で、境克彦社長らへの解任議案が上程されることがわかった。社長就任から丸6年となるが黒字化のメドは立たず、人材流出が止まらず、求心力の低下が囁かれていた。業を煮やした社員株主が「経営の透明性や説明責任が不十分」だとして引導を渡した格好だ。
時事通信の経営危機は大株主の電通の無配転落から始まった。年間20億円以上の配当収入が消し飛び、2026年3月期の最終赤字は前期の10億円から23億円に膨れ上がった。
ちなみに前期売上高は156億円、営業赤字は36億円。定期異動の凍結や役員報酬のカットなど涙ぐましい努力を重ねたが「出血」は止まらない。
三井住友銀行と朝日信用金庫から各10億円を借り入れ、「合計22億円も借り入れて急場を凌いだ」(関係者)ともっぱらだ。ダントツのメーンバンク、三井住友銀行からの借入も28億円に膨らんだ。
若手・中堅の退職が相次ぐのも無理はない。紹介報酬を得られる「リファラル採用」を導入した日経から複数の優秀な記者を引き抜かれ、現場は深刻な人手不足。各持ち場の仕事量が急増し、不満の矛先が境社長に向くのも当然だろう。
時事通信は社員が全株を保有する社員持ち株制を取っており、株主総会に業務担当の管理職が、解任議案を提出したため、社長室や総務局のある本社8階は大混乱に陥った。株総の招集通知の送付が6月にずれ込んだ。
本誌が入手した事業報告等によると、社長解任議案の提案理由は「中期経営計画の具体的数値目標や進捗指標が十分に明示されておらず、また、新規事業および関連会社事業についても、収支、採算ライン、主要、KPI、目標未達時の見直し等が十分に開示されていません。経営を主導してきた境氏には、こうした経営の透明性および説明責任に関する課題について責任があると考えます。よって、解任を求めます」と書かれている。
同時に、社員株主は「監査役としての監査・チェック機能が十分に発揮されていたかについて疑義があり、統治体制の信頼回復のため」として柵木真也監査役の解任を求めている。本誌は株主提案をした社員に直接理由を尋ねたが、「立て込んでいるので」と回答を得られなかった。同社のベテラン社員は「株主提案の理由は具体的で説得力がある。社の将来を案じ『何とかしてくれ!』という社員共通の思いが伝わってくる」と漏らす。
2020年に社長に就任した境氏は新事業を複数立ち上げたものの、その経営実体は明らかにされず「ブラックボックス」との批判が渦巻いていた。また、今年の春闘交渉は若手・中堅の退社が続出したためか、実に25年ぶりの賃上げ(月1千円)に踏み切ったが「ベアの原資に関する説明はなく、むしろ不信感が広がっている」(中堅社員)
一方、会社側は株総で境社長を含む8人の取締役人事案を提示。社長、監査役の解任議案が「可決されることはないと見ているが、境社長自身、どのぐらい解任賛成票が入るか気にしているようだ」(別の本社勤務社員)。
社員の4割ほどが加入する労働組合は株総への対応を協議中。時事通信では労使交渉が激化した1971年、初代社長の長谷川才次が引責辞任した例がある。
仮に株主提案が否決されても、すでに境社長の信望は地に墜ちている。再任されても途中で身を引き、大幅な若返りを図るとの見方が浮上している。