保守派の悲願「旧宮家から養子」/麻生太郎は「令和の道長」か/陛下から釘を刺すようなお言葉!

号外速報(6月16日 10:20)

2026年7月号 POLITICS [号外速報]

「自民と維新の連立政権なので、制度設計の細かいところまで両党で詰めて欲しい」――。

皇族数確保に向けた皇室典範改正案を作るに当たり、首相・高市早苗からとんでもない発言が飛び出した。6月12日に首相官邸で日本維新の会の共同代表・藤田文武と会談した際のことだ。

首相が事前審査を行うよう指示

「国会の総意」は通過儀礼でしかない?(写真/宮嶋巌)

何が問題なのか――。

衆参正副議長が取りまとめた「国会の総意」に基づき、政府が今国会に提出する改正案の作成を始めた。その制度の詳細について、与党に事前審査を行うよう、首相自ら指示した点だ。

皇室典範改正は、首相自身を支えてくれた保守派の岩盤支持層を永遠に繋ぎ止めるための最重要課題、今国会で必ず成立させるという決意の表れだった。

平成の先帝陛下の「生前退位」では、当時の衆院議長・大島理森が主導し、特例法策定に向けた与野党協議を精力的に重ねて、全会一致で成立に漕ぎつけた。

大島が心を砕いたのは、憲法第一条に「日本国民の総意に基づく」と定められた、現在の天皇制を揺るがしてはならないという一点だった。

仮に国会の論議が二つに割れる事態となれば、「象徴天皇制」の土台が崩れかねない。こうした懸念が当時の与野党に共有され、国民の総意=国会の総意(最大公約数)として結論を取りまとめたのだ。

「皇位継承」の議論から逃げる

令和の世に生きる「ラスト藩屏」、麻生太郎副総裁(写真/堀田喬)

翻って、今回の皇室典範改正の論点の絞り込みは奇妙だった。

現在、皇位継承順位を有する次世代の男性皇族は、秋篠宮家の悠仁親王1人しかいない。

世論調査でも明らかなように、多くの国民の関心は「愛子さまが天皇になれるかどうか?」――。こうした、本来、議論すべき「皇位継承の在り方」をすっ飛ばして、「旧宮家からの養子縁組」を法改正に盛り込むことになった。

あえてテーマを「皇族数確保」にずらしたのは、皇位継承の議論を始めたら「男系絶対派」と「女性・女系容認派」に国論が二つに割れ、国会が紛糾するからだ。

結果、今回は「皇位継承」の議論から逃げ、与野党の全体会議を経て①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する、②1947年に皇籍離脱した旧11宮家の男系男子を宮家に養子として皇族に迎える――という2021年に「安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議」が示した2案を「了」とすることを「国会の総意」とした。

端的に言うと、保守派の悲願である「旧宮家の男系男子の養子」が、国民の知らないところで滑り込んだかっこうだ。

しかも、その法案化に当たり、与党が事前審査を行い制度の詳細を詰めるよう、首相から厳命されたというわけだ。

衆院で3分の2を制した高市にとって「国会の総意」は通過儀式でしかない。高市とのやり取りを得意げに語る藤田も脇が甘い。はからずも自民・維新の両代表が馬脚を現した格好だ。

令和に生きる「ラスト藩屏」

麻生副総裁の懐刀の山崎重孝内閣官房参与(記者会見動画より)

実は「旧宮家から養子縁組」を推し進める黒幕がいる。

自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」会長を務める元首相・麻生太郎(85)だ。高祖父・大久保利通(元老)、曾祖父・牧野伸顕(昭和天皇の側近)、祖父・吉田茂(元首相)の家系に生まれた。

麻生は学習院初・中・高等科、学習院大学卒業。三笠宮寛仁親王妃・信子さまの「実の兄」、皇族の「外戚」でもある。言葉を換えれば、令和の世に生きる「ラスト藩屏」である。

麻生は、①案について女性皇族の結婚後も配偶者や子は「皇族としないことが極めて重要」と強調し、②案をより重視する立場を繰り返し主張してきた。「男系男子」を護持する皇室の藩屏である。

その麻生の懐刀とされるのが、内閣官房参与(皇室制度連絡調整総括官)の山崎重孝だ。

山崎は総務省行政局長を経て、2018年に皇位継承式典事務局長、19年に内閣府事務次官に就任。在任中に前述の「有識者会議」の政府側の実務責任者として辣腕を振るった。

一旦、23年9月に退任したが、24年3月に皇位継承や皇族数確保への対応のため、内閣官房参与へ復職した。余人をもって代えがたい、この問題のエキスパートだ。

昨年の通常国会で、①案の先行合意に傾きかけた与野党協議の流れを(反対派の麻生側へ)強引に引き戻し、「矩を踰えている」と野党側の元首相・野田佳彦を激怒させたほどのやり手だ。

現在、山崎の指揮下で養親(養子を迎え入れる側)の範囲、養子となる男系男子の対象、皇室会議の運営など…官邸実務チームが作業を始めたところだ。

異例も異例の新宮家創設

「第20回世界バラ会議福山大会2025」の開会式でお言葉を述べる三笠宮寬仁親王妃殿下(宮内庁HPより)

もう一人のキーパーソンは衆院選で自民大勝後、麻生が衆院議長に推挙した森英介(77)だ。茫洋とした人柄で目立つ存在ではないが、麻生派(為公会)事務総長を務めた側近中の側近。

麻生が森を推したのは皇室会議の要となる衆院議長に側近を据えたかったからだ。実際、森は水面下で麻生と接触を繰り返し、取りまとめ案の説明と理解を求めた。

ちなみに森は昭和電工を創設した「森コンツェルン」の出身。上皇后美智子さまの遠縁に当たり、麻生に付き従う「藩屏」の一翼である。

ここに来て麻生が強引に進める養子案に重大な懸念が浮上している。

前述した麻生の実の妹の信子さまは昨年9月、新たに創設された「三笠宮寛仁親王妃家」の当主となった。1990年の秋篠宮家創設以来、35年ぶりとなる新宮家誕生で、親王妃による宮家創設は明治以来、前例がない。

信子さまと三笠宮家を継承した長女彬子さまとの不仲の影響を受けたとされるが、皇族費の増額を伴う新宮家の創設が、なぜできたのか――。首を傾げる向きもある。

与野党内で指摘される懸念は、子どもがいる宮家が養子を迎えるハードルが高いため、(現在の5宮家のうち)子どもがいない常陸宮家と信子親王妃家が有力な養子の受け入れ先になる可能性が高いことだ。

それにしても昨年、なぜ、異例も異例の新宮家ができたのか――。

当時の宮内庁幹部は「禍根を残したかもしれない」と言う。

「男系維持の防波堤」足らん

皇室典範改正に待ったをかける? 怒り心頭の野田佳彦元首相(写真/宮嶋巌)

さらに、衆院議長の森は「国会の総意」の取りまとめに当たり、養子になった皇族に男子が生まれた場合、「皇位継承権を持つことになる」と明言。

野党側の批判を浴びて「言葉足らずだった」などと釈明したが、男系男子派のホンネが漏れたのではないか。

森の言葉に当てはめると、もし親王妃家が迎えた養子に男子が誕生したら、名実ともに麻生家が皇位継承権を有する皇族の外戚になる。

上皇さまの退位に関する有識者会議座長代理を務めた政治学者の御厨貴は、文藝春秋7月号掲載の元首相・野田との対談で、麻生が「平安時代の藤原氏」のようになり「政治権力者と天皇の権威との距離が近くなって、皇族の政治的中立性が揺らぐ可能性がある」と警鐘を鳴らした。

藤原道長は自身の娘を天皇の后として次々に入内させ、3人の天皇の外祖父として栄耀栄華を誇った。「令和の道長」と化す可能性があるというわけだ。

もちろん麻生は悠仁親王に至る皇位継承を揺るがせにしない立場は明確にしている。養子案の推進は「男系維持の防波堤」足らんとするラスト藩屏の信念だとしても、「皇族の政治的中立性が揺らぐ」との批判に、何と答えるのだろうか。

「令和の道長」は厭わしい!

釘を刺すようなお言葉を使われた今上天皇(宮内庁HP動画より)

皇族数確保の名の下に、有力政治家が実の妹の宮家を皇位継承の受け皿にするような制度改正を画策していると疑われたら、日本国民の総意に基づく「象徴」としての天皇の地位が毀損しかねない。

冒頭の高市の発言に激怒した元首相の野田ら野党側から、今国会での皇室典範改正に待ったを掛ける声が上がり始めた。明言こそしないが、「令和の道長」は厭わしい。

「皇室の在り方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすることだと考える。皇族数確保の在り方の議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでいる」

今上陛下は6月11日、欧州訪問に先立つ記者会見で「制度に関する事項に言及は控えたいと思う」と前置きした上で、こう釘を刺された。

「寸鉄」の真意を汲み取り、与野党とも今一度立ち止まって考えるべきだろう。

(敬語・敬称略)

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