連載/病める世相の心療内科/消えゆく「裏通り」の人生学校/遠山高史・精神科医

2026年6月号 LIFE [病める世相の心療内科]

私は裏通りを歩くのが好きである。旅先の小さな町でも、時間があるときは裏通りを歩いてみる。人混みが嫌いというわけではないが、にぎにぎしい表通りや車の行き交う大通りはせわしなく、どこかリアルさに欠け、作り物の世界のような感覚にとらわれる。裏通りを行くと人々の暮らしぶりが感じられて、なぜか気持ちが落ち着き、決まって幼年期のころを思い出す。私の生まれは新潟県上越市であるが、父親の仕事の関係で、ほんの2、3歳のころ、トイレが垂れ流しのSLに乗って上野にたどり着き、6畳間しかない安アパートに兄や妹と両親の5人で暮らした。上野は関東大震災でも戦災でも焼けることなく、古い町並みがそのまま残っていた。裏通りは迷路のようにつながり、周辺の子供たちは、もっぱらそこを遊び場にしていた。通りには、戦死した息子の写真を表に飾った時計修理屋、意味不明の英語の看板を出して石 ………

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