独占スクープ/「極秘データ」初公開/生保10社「異常極まる販売手数料」

メットライフ生命の月払い変額保険の初年度手数料は何と120%、総額で最大216%にのぼる。笑いが止まらないボロ儲け。

2026年6月号 BUSINESS

野放しの責任は重い

プルデンシャル生命保険の営業マン(保険募集人)による巨額の金銭詐取多発をきっかけに、保険営業の闇が白日の下に晒された。同じグループ会社のジブラルタ生命保険や、上位生保のソニー生命保険でも同様の金銭詐取が発覚。ジブラルタ生命では顧客から約70件の被害申告があり、ソニー生命でも約30人の顧客が被害を訴えているという。

ソニー生命は4月24日、2007年に導入した専属代理店制度(正式名称「プレミア・エージェンシー」)の廃止を公表。併せて代理店やライフプランナー(LP)が販売した保険契約に不審な点がないか確認調査を行い、5月末を目途に進捗状況を発表する。全件調査の対象顧客は約280万人にのぼるという。

こうした金銭詐取多発の原因として、営業成績がそのまま収入に直結する「フルコミッション(完全歩合)型」が槍玉に挙がる。例えば、4月23日付の日本経済新聞は「ソニー生命も金銭詐取疑い、過度な成果主義放置」の大見出しで報じ、ソニー生命とプル生命に共通するフルコミこそが、あたかも悪の元凶のように書いている。

隠蔽的な生保業界の体質を知る金融庁幹部は憤りを隠さない。

「一見わかりやすい論法ですが、こうした短絡的な議論はかえって問題の本質を見誤らせてしまう。本当に痛いところを突かれたくない生保業界が、あえて『フルコミ元凶論』を言いふらしているのではないか」

目の前に「大きなニンジン」

完全歩合制はタクシー運転手など他の業種でも広く採用されており、欧米の金融機関でも珍しくない。一般に完全な歩合制より「固定給+歩合制」のほうが数値目標やノルマを設定しやすく、「自己責任のフルコミ」以上に無理な営業を強いる場合があるという。

だとすれば、何が保険営業の悪の元凶なのか。端的に言えば販売手数料の異常な高さだ。

問題が多い業種として不動産仲介が槍玉に挙がるが、不動産の仲介手数料は法律で「売買価格×3%+6万円(+消費税)」が上限と定められている。一方、保険商品の販売手数料には明確な数値を示した上限はなく、受け取る総額を制限する総量規制もない。「青天井」なのだ。

プルデンシャルのLPだった男性は「プルに入った一番の理由は不動産より稼げるから。手に職がない自分の夢が叶うのが保険営業だった」と振り返る。彼は日焼けした肌に「ツーブロック」の髪形で青いスーツを身にまとう、いわゆる「プルゴリ」として6年ほど勤め、当時は年4千万~5千万円稼いでいたそうだ。「保険を売るだけの自分がこんなに稼げるなんて異常だ」と感じたという。

プル生命の販売手数料は、顧客が年間に支払う保険料のおよそ4割が初年度にLPの懐に入る仕組み。業績に応じたボーナスが加わり、年収3億円に達するLP長者もいる。

プル生命は1月の社内調査報告書で不正の原因について「金銭的利益を重視する志向を持つ人材を惹き付けた」と総括したが、そもそも手数料の異常な高さについて、3度の記者会見を開いても何ひとつ語らなかった。高い手数料を維持できなくなったら、腕が立つLPが離職してしまうからだ。

実は、手数料の高さではLPのような直販社員より、実績を積み独立した代理店のほうが異常な水準になっており、不祥事の巣になりやすい。

保険の営業マンに支払われる初年度手数料がどれほど高いか――。本誌が入手した極秘データ「各社の手数率表」をご覧いただきたい。

平準払い(月払い)の変額保険とは、毎月の保険料を生保が投資信託などで運用し、その実績によって死亡保険金や解約返戻金が変動する商品。NISA(少額投資非課税制度)の普及による「積み立て」ブームの中、「保障」と「投資」を兼ね備えた商品として人気を集めている。

ブームに火をつけたアクサ生命の初年度手数料は82.5%。次年度以降も手数料が入り、7年で総額180.38%が代理店の懐に入る計算になる。アクサが好業績を挙げると、競合各社がこぞって変額保険に参入した。商品性は各社で殆ど変わらないため、乗り合い代理店への手数料の高さを競い合った。

「初年度手数料は年間保険料の100%を超えてはいけない」という暗黙の了解があったが、日本生命の子会社、はなさく生命が112.3%と禁を破り、各社が追随。遂にメットライフ生命が大型代理店向け初年度手数料120%というとんでもない商品を出した。総額では最大で216.8%に上る。仮に「毎月3万円の変額保険」の顧客を獲得できたら、初年度だけで43万2千円も稼げる。総額では最大77万7600円になる。笑いが止まらないはずだ。

競合商品となるNISAの投信は販売手数料が無料だ。営業マンが顔色を変えてNISAを罵倒し、変額保険を推すのは、目の前に大きなニンジンがぶら下がっているからだ。

大手生保の幹部は「顧客を食い物にする商品を認可し、異常な販売手数料競争を放置してきた金融庁は正義の味方ではない」と酷評する。こうした異常事態を招いた背景には、金融庁の「誤算」があった。

保険料は純保険料と付加保険料で構成される。前者は、将来の保険金・給付金支払いに、後者は保険会社の経費に充てられる。付加保険料は06年以降、実質的に自由化され、独自の経費率で保険料を設定できるようになった。これは、複数の生保の商品を販売する「乗り合い代理店」の台頭に合わせて、従来は画一的だった商品性が競争により多様化することを期待したものだった。金融庁は当然、価格競争により保険料が下がることを想定していた。しかし、実際は代理店に支払う販売手数料の値上げ競争を招いてしまった。

金融庁は見て見ぬ振り!

ある代理店経営者は「お客さんは商品の違いが全くわからないから、営業マンに言われるまま。代理店は自分たちが儲かる商品をオススメするだけです」とぶちまける。

いま流行っている最も悪質な手口は「平準払い」と「一時払い」の手数料の差を利用したものだ。保険料を一括で支払う一時払い型は、支払い保険料が数百万円~数千万円と大きいため、手数料は最大でも初年度で8%程度。1000万円の場合、販売側は80万円を得るだけだ。これを、先ほどの平準払いで年払いを選択させ、1000万円を200万円ずつ5年かけて支払ってもらうと、どうなるか。平準払いの初年度手数料はメットライフの場合120%だから240万円も得ることになる。

そして5年後に解約せずに途中で保険料の支払いを止める「払い済み」にしてもらう。「分割で支払った方が時間分散になりますし、払い済みにすれば、そのまま保障も継続します」などと甘い囁きで勧められるが、実際は顧客のデメリットは大きい。手数料目当てのボッタクリの新手口として横行しているのだが、金融庁はお気づきでないようだ。

ある外資系生保幹部は「手数料の異常な高さに目がくらんだ営業マンはやりたい放題。プルデンシャルだけがワルじゃない。金融庁は見て見ぬ振り! その責任は重い。本当に顧客のことを考えるなら、保険手数料に総量規制を入れるべきだ」と言う。規制当局の目が、いつまでも節穴であっていいわけがない。

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