太陽HD「5千億円買収」の舞台裏/ベインねじ伏せたKKR/笑いが止まらないオアシス

号外速報(4月3日 9:00)

2026年5月号 BUSINESS [号外速報]

ようやく出口が見えて来た太陽ホールディングス(同社HPより)

化学品メーカーの太陽ホールディングス(HD)が株式を非公開化する方針を決めた。

香港のアクティビストであるオアシス・マネジメントなどが非公開化を迫っていた。米投資ファンドのKKRが約5000億円を投じて買収する。

内情を知る人物は「昨年2月に複数社から買収提案があった。年末の12月にKKRと米投資ファンドのベインキャピタルに絞られた」と、舞台裏を明かす。

一計を案じベインを引っ張り込む?

佐藤前社長の居座りを拒めなかった太陽HDの齋藤斉社長(同社HPより)

太陽HDをめぐっては、昨年6月の定時株主総会で、当時社長だった佐藤英志氏の取締役再任に、筆頭株主のDIC、オアシス、創業家が反対を表明。オアシスらは、佐藤社長の肝いりで始めた医療・医薬品事業を「失敗」と断じ、退任に追い込んだ。

ところが、佐藤氏は社長を降りてからも医療・医薬品事業(子会社)のトップに居座り、「後継体制を裏で操り、復活の機会をうかがっていた」と同社幹部は言う。

また、かねて太陽HDでは上場を維持したい役員らが非公開化に反対しており、昨年2月にKKRなどから買収提案を受けると、不可解な動きが起きた。

「増配の方針が3月に発表され株価が急騰したのに続き、5月には非公開化提案が報じられ、再び株価がうなぎのぼりとなった。あえて臆測を流すことで株価を吊り上げ、買収を邪魔しようとしているように見えた…」と事情通は言う。

株主総会で社長の座を追われた佐藤氏にとって「上場維持」は、すこぶる都合が悪かった。

上場している限り、大株主のオアシスや創業家が、佐藤氏の返り咲きに猛反対するからだ。

そこで一計を案じベインを引っ張り込んだ模様。「ベイン主導で非公開化された後、佐藤氏自ら社長にカムバックする目論見だった」(事情通)。

一部で日本産業推進機構(NSSK)による買収説などが報じられたが、いずれも立ち消えとなった。最終的に昨年末、KKRとベインの一騎打ちとなり、KKRに軍配が上がった。

望みを絶たれた佐藤前社長は放逐

「一騎打ち」を制したKKRジャパンの平野博文社長(同社HPより)

勝敗を分けたのはKKRが提示した条件がよかったからだが、半導体製造装置専業メーカーのKOKUSAI ELECTRIC(旧・日立国際電気)や武州製薬への投資実績が認められ、相性のよさが評価された。

KKRにとって想定外は、株価が1年前の2000円前後から倍以上となったため、TOB価格は4750円に跳ね上がったことだろう。

「非公開化の方針が決まったのは今年1月、その頃には反対勢力も矛を収め、非公開化に協力的になった」(事情通)。すでに社内では、既存の長期経営計画とKKRのプランが融合した「目指す姿」が共有されているという。

一方、望みを絶たれた佐藤氏は、6月の任期満了で放逐される運命だ。

佐藤氏を批判してきた創業家の関係者は「(今回の結果に)不満はない。KKRを全面的に支持したい」と評価した。

佐藤氏と創業家の事業方針や報酬制度をめぐる対立は根深く、2017年に議決権を希薄化された創業家は「会社を乗っ取られた」と遺恨を持っていた。

創業家の関係者は「今の齋藤斉社長とは良好なコミュニケーションが取れている」と語る。

今後、創業家の資産管理会社が優先株式の約3%、積水化学も優先株式の10%を保有する予定。積水化学とはエレクトロニクス事業の親和性がある。

DICは約2割の保有株式の売却により莫大な資金を得る見通し。成長投資の倍加と自己株買いや増配による株価上昇が期待される。

オアシスはDICの大株主でもあり、太陽HDに加えDICの株式も高値で売り払えるから笑いが止まらない。

社内混乱が続いた太陽HDはようやく出口が見えて来た。5000億円の高値に見合う結果を出せるか、KKRの力量が問われる。

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