楽天「ただ乗り同然」1千万回線突破/宮川ソフトバンクの鬱憤

お祝いムードはどこへやら。「ハンデはおしまい」とばかりに競合他社の不満は爆発。

2026年5月号 BUSINESS

楽天の三木谷浩史会長は早期の2千万回線の達成を目指すものの…(HPより)

楽天モバイルが昨年12月に総契約数1千万回線を突破した。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は楽天経済圏の底上げを図るため、早期に2千万回線の達成を目指すが、1千万回線の突破で、携帯電話会社として1人前になったと認識され、2026年度は正念場の年となる。携帯電話料金の引き下げを実現するため、「第4のキャリア」として、菅義偉政権の後押しを受けて誕生し、20年4月にサービスの本格提供を始めてから6年。新規参入事業者として目をつぶられていた様々な課題への対策を求められ始めている。

「1千万に到達したことは一つの分岐点だ。お祝いを申し上げたいが、不平不満がいっぱいある」。ソフトバンクの宮川潤一社長は楽天モバイルへの鬱憤をぶちまける。

一つ目の不満は、KDDIから回線を借りているローミング契約の存在だ。楽天モバイルはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクと同様に総務省から電波帯の割り当てを受け、自社回線で通信サービスを提供する移動体通信事業者(MNO)の指定を受けている。MNOは利用者が少なく、採算が厳しい地方でも自社回線で携帯電話が使えるよう全国で設備投資を行わねばならない。各社は電気代や人件費などの高騰で携帯料金の実質値上げに動いたが、楽天モバイルは据え置いたままだ。

このため、地方を中心にKDDIから電波を借りていることで設備投資を抑制できるから値上げに動かないという不満が業界内で広がっている。宮川社長は、楽天モバイルの参入で、MNOが4社になった意義について「4社になると国内ネットワークが4倍、強靭化をする効果があるから我々は4社目のMNOの誕生を喜んだ。だが、果たして、その結果になっているのか」と指摘。「ローミングという形で、単なるビジネスだと割り切ってやられているとしたら、私の目線とはちょっと違うし、残念に思う」と強調する。

楽天モバイルとKDDIのローミング契約は9月に期限を迎える。KDDIの松田浩路社長は自社と楽天モバイルの電波が重複する地域のローミングを「順次切っていく」との考えを示す。楽天モバイルは26年度に通信網整備に約2千億円を投じるが、費用がかかる地方に加え、ユーザー数増による通信品質低下が指摘される都市部での通信品質の強化への対応は容易ではない。

回線契約時に得られる端末割引やポイント還元などの特典を狙って、短期解約を繰り返す「ホッピング行為」への規制強化が検討されていることも逆風だ。宮川社長は「新規事業者が参入するタイミングだったので、抱え込みをとにかくばらそうと現在のような規制になった。ただ、それは事業者目線、政治目線オンリーだったような気がする」と分析。「ユーザー目線にもう一度立ち返ると、やっぱり長く使って恩恵を受ける立ち位置に見直した方が良い」と主張する。販売規制が長期契約者を優遇できる方向に変わった場合、MNOとしての歴史が浅い楽天モバイルは不利になる。

携帯回線契約の長期化には通信品質の強化が欠かせない。だが、各種調査で楽天モバイルの通信品質は競合他社を下回ったまま。楽天グループの携帯事業は25年度も1618億円の営業赤字だった。三木谷会長は自社グループの各種サービスのハブとして携帯事業を重要視するが、巨額の設備投資を続けつつ早期黒字化にも取り組む難題は容易でなく、楽天グループのアキレス腱として経営の屋台骨を揺るがしかねない。後ろ盾の菅氏も政界を引退し、頼みの綱もなく、道のりは厳しい。

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