「あなたの調剤薬局」で告訴沙汰/「健康サロン」vs「イントロン」

「あなたの調剤薬局」のシステム運営権をめぐり熾烈な訴訟バトル。刑事事件に発展しそうな雲行きに。

2026年4月号 DEEP

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「あなたの調剤薬局」HP

「あなたの調剤薬局」という調剤薬局向けシステムの権利を巡って、開発した「健康サロン」(東京都渋谷区)と埼玉の中堅調剤薬局チェーン「イントロン」(川越市)が対立しており、刑事事件に発展しそうな雲行きだ。

このシステムは薬局1店舗あたり月約1万円の利用料がかかるが、導入すれば客がLINEアプリを使って処方箋の予約ができたり、服薬中のフォローアップを自動化できたりする。服薬フォローや副作用などの情報の医師への提供は厚労省が推進しているが、中小のチェーンでは対応が難しい面があった。「あなたの調剤薬局」は現在約1200の薬局が導入しているという。

健康サロンがこのサービスをリリースしたのは2019年9月のこと。イントロンは早々に導入を決め、将来性に気が付いた。同社は「小江戸薬局」などの店名で約40の薬局を展開する。健康サロンはユーザーであるイントロンの知見を活用することで他のチェーンへの円滑な導入や必要なバージョンアップができると考えた。一方のイントロンは上場を目指しており、成長戦略としてIT分野に進出する必要があった。利害が一致した両社はシステムの販売について提携し、具体的には健康サロンがプログラム著作権を6千万円でイントロンに売却し、同社に「システム使用料」の支払い名目で売上を分配することにした。

顧客開拓は順調だったが、次第に健康サロンの社内ではイントロンの貢献がなさすぎるとの不満がたまった。23年秋には健康サロンから分配した売上の累計額が、イントロンから最初に受け取った6千万円を上回り、「イントロンは何もしないで丸儲けという状態になった」(健康サロン関係者)。そこで健康サロンは「システム使用料の料率を下げたい」と申し出るとともに協議中の支払いを停止した。

協議は不調におわり、24年12月イントロンは健康サロンを相手取ってシステム使用料の支払いを求める訴訟を起こした。並行して健康サロンの預金口座に2度にわたり仮差押えを行い、同社はそのつど解放金を供託しつつ、イントロンに対し特許権に基づくシステムの使用差止め等を求める仮処分申請で対抗した。健康サロンはシステム運営に不可欠な特許を握っている。

提携は期間満了で25年2月正式に終了し、5月にイントロンは債権者の立場で東京地裁に健康サロンの破産手続き開始を申し立てた。イントロンは「健康サロンは債務超過で支払不能」と主張し、審理されてきたが、健康サロンは直近決算で債務超過を解消したうえ、通常の債権者破産と異なり「債務名義」を得ていないとの裁判所の指摘を受け、今年2月16日イントロンは申し立ての取り下げに追い込まれた。

健康サロンは当初より破産申し立てについて信用を低下させて顧客を奪うためのネガティブキャンペーンだと主張してきた。実際イントロンは薬局に対し不安を煽るかのように「健康サロンが倒産した場合でも…」などと記した書面を送付している。健康サロンは破産申し立てを受けた翌月渋谷署にイントロンの社長らを偽計業務妨害などの罪で刑事告訴し、受理されている。「今年に入って捜査が本格化している」(前出関係者)という。本誌はイントロンに事実確認などを求める質問状を送付したが、期限までに回答がなかった。

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