「地域新聞社」「SAAF」に魔の手/「ウルフパック軍団」の音頭を取る某投資顧問

2026年4月号 BUSINESS

地域新聞社の細谷佳津年社長(HPより)

東証グロース上場のSAAFホールディングスを巡る騒動が続く。前号で報じたとおり、前社長の前俊守氏は復権を狙って現経営陣に対し臨時株主総会の開催を突き付けている。そんな中、明らかになってきたのは、前氏の背後で蠢く「ウルフパック軍団」の存在だ。じつは、数カ月前、彼らは別の銘柄を標的にしていた――。

「議長不信任の動議! 私を議長にしてください!」

昨年11月30日に千葉県内で開かれた地域新聞社(東証グロース上場)の定時株主総会は冒頭から荒れた。県内でフリーペーパー事業を営む時価総額20億円余りの同社を巡っては、夏頃から株主構成に異変が生じていた。「合同会社YN企画」「バイオセラミック」「合同会社Happyhorse」「KING有限責任事業組合」――。聞き慣れない新株主が次々と株を買い集め、保有割合は短期間で計25%ほどに達していた。大量保有報告書を提出していたのはYN企画だけ。それ以外は共同保有者になっていないなど、表向きは各個ばらばらの買い集めだ。

しかし、会社側は裏で意思を通じ合い獲物を囲い込むウルフパックの策謀を嗅ぎ取った。経営乗っ取りを目論む共同協調行為を恐れて有事対応型買収防衛策の導入に動いた会社側に対し、一部株主はすかさず総会での修正動議を予告、緊張が一気に高まった。

迎えた総会当日、先述のように口火を切ったのはバイオセラミックの代表者。それに加勢したのは能勢元氏だ。仕手銘柄でたびたび名前が取り沙汰される有名会計士である。同氏は直前の11月18日付で「MTM Capital」なる会社の取締役に就任。同社はYN企画に保有株を譲渡する前の総会基準日時点で議決権を有していた。能勢氏はあからさまだった。

「MTMは議長交代に賛成します。KINGさんも賛成ですか? バイオも賛成ですか? Happyさんは?」

事前に示し合わせたかのような呼び掛けに対し、「ハイ」や「賛成です」といった声が上がる。

さらに加わったのは「NOX」なる会社の代表を名乗る篠原猛氏。18年前に春日電機(2009年に会社更生法申請)を巡る特別背任事件を引き起こした人物だ。「どういう経緯で不動産を購入したのか、役員が答えろ!」と、同氏は現経営陣を強く非難した。

結局、この日の総会は会社側が辛くも逃げ切り、株主側が役員交代を求めて提出した修正動議は退けられた。ただ、遡ること1カ月半前の10月、株主側は気になる動きを見せていた。買い占めた現物株を売り、かわりに信用取引でほぼ同量を買い建てたフシがあったのだ。影響力を保持しつつ資金を捻出する目的だと見られる。

捻出資金の振り向け先こそがSAAF社と見られる。新たな大株主には例のYN企画とHappyhorseが登場。都内の印刷会社経営者や横須賀市内の男性も地域新聞社株買い占めと共通する。

これらウルフパック軍団の音頭を取るのは投資顧問会社の「ファーストメイク・リミテッド」と見られる。オプトロム(15年上場廃止)が犯した有価証券報告書の虚偽記載に絡み10年前に業務停止処分を受けた会社だ。また、関係者の人脈を辿ると、行き当たるのはabcやピクセルカンパニーズ(今年1月上場廃止)といったいわく付き銘柄。当初、関係者が狙ったのは地域新聞社とピクセル社の経営統合だったともされる。

直近、地域新聞社を巡っては、船井電機の倒産間際に介入した古寺誠一朗氏が触手を伸ばしており、件のウルフパック軍団が下駄を預けて撤収しSAAF社に全精力を傾ける可能性もある。会社側は買収防衛策導入を決議、警戒レベルを最高度に引き上げている。

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