自民が参院東京選挙区「菊川怜」擁立へ/玉木国民は「トップ当選」狙い/石丸「再生の道」と連携も

号外速報(4月11日 16:30)

2025年4月号 POLITICS [号外速報]

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「東京選挙区の目玉!」に菊川怜氏(YouTubeより)

自民党が7月投開票の参院選に向け、東京選挙区の目玉候補として俳優の菊川怜氏(47)の擁立を準備していることがわかった。同選挙区には改選を迎える現職の武見敬三元厚生労働相(73)の立候補が決まっていたが、もう1人候補を擁立するかを含め未定だった。

この選挙区を巡っては、前々回の衆院選で落選した石原伸晃元幹事長(67)が強い意欲を見せているが、自民に強い逆風が吹く中、厳しい戦いになるのは必至。自民は「石原氏で勝利するのは難しい」(都連関係者)と判断し、幅広い支持が見込める菊川氏を擁立することで、逆風をはね返したい考えだ。

大激戦の東京選挙区でも「勝てる候補」

菊川氏を巡っては、これまで何度も国政選挙への出馬観測が浮上していた。昨年秋に離婚した後、現在は子育てと仕事の両立を果たしている。「知名度が高い菊川氏ならば、男女を問わず、幅広い世代からの集票が見込める」(自民党関係者)ため、都連内には今も石原氏を推す声が一部にあるが、5月にも菊川氏擁立を決定する予定だ。

菊川氏は名門女子御三家の1つ、桜蔭高校(東京)から東大工学部建築学科に進学し、在学中から芸能活動を開始。当初はモデルとして活動していたが、俳優業に進出。朝の情報番組などでキャスターも務めるマルチな才能で知られる。

自民は以前から出馬を要請していたが、昨年11月に実業家の穐田誉輝氏(56)との離婚を発表。プライベートでひと区切りがつき、本格的に芸能活動を再開していた。穐田氏との間にもうけた3人の子供は、菊川氏が引き取って育てているという。

自民都連関係者は「菊川氏は豊富な芸能活動に加え、今はシングルマザーとして3人の子育てにも奮闘している。有力な候補が居並ぶ東京選挙区の中でも『勝てる候補』として擁立の準備を進めている」と明かす。菊川氏も出馬に前向きな姿勢を示しており、現在出演中のテレビCMのスポンサーなどと契約調整を進めている模様だ。

石原伸晃は「勝手に触れ回っているだけ」

もはや過去の人?(石原伸晃氏のXより)

今回の参院選東京選挙区の改選定数は6だが、非改選の欠員1を補充する補選も同時に実施される。獲得票数が上位の6人は通常通りに6年の任期が与えられ、7番目の当選者は欠員の残り任期にあたる3年を務めることになる。

すでに立憲民主党は現職の塩村文夏青年局長代理(46)のほか、比例区から回る奥村政佳氏(47)の2人が立候補する予定。共産党も3選を目指す吉良佳子政策副委員長(42)を擁立。公明党は山口那津男元代表の後継として外科医の河村雄大氏(40)の出馬を決めている。

これに対し、自民は武見氏が再選を目指して出馬し、2人目の擁立を模索していた。東京選挙区を巡っては、2021年10月衆院選で東京8区から出馬し、落選した石原氏が、一昨年6月の衆院選への出馬断念を発表した際、「次期参院選の東京選挙区から出馬する」と一方的に表明した経緯がある。

自民都連関係者は「衆院選で勝利が見込めないから参院選に回るという論法では、有権者の理解が得られるはずがない。都連としては何も機関決定しておらず、東京選挙区からの立候補は、石原氏が勝手に触れ回っているだけだ」と不快感を隠さない。

石原氏を巡っては新型コロナウイルス感染が広がる中で、食事を伴う派閥の会合を開いていたことが問題視された。さらに自身が代表を務める選挙支部が、新型コロナ禍で困窮事業者を支援するための雇用調整助成金を受領していたことも発覚。選挙支部がコロナ助成金を受け取るのは異例であり、集中砲火を浴びた。結果、落選直後に任命された内閣官房参与を就任からわずか数日で辞任した。自民都連は武見氏と共倒れの可能性もある石原氏ではなく、目玉候補として著名な菊川氏に白羽の矢を立てたわけだ。

玉木国民民主と石丸「再生の道」の連携も?

大きな話題を呼んだ玉木vs石丸「久しぶりに会いましょう」緊急党首会談(「リハック」配信動画より)

注目を集める東京選挙区には各党とも力を入れており、有力候補の擁立を目指している。

国民民主党やれいわ新撰組のほか、日本維新の会も候補者選定を進めており、なかでも国民民主の候補者選びに高い関心が集まっている。すでに同党は支持率で立憲民主を抜いて野党トップに躍進。最近の地方選挙でも同党が推薦する候補者が軒並みトップ当選を果たす勢いを見せているからだ。

追い風が吹く同党は、2月の党大会で1人区でも積極的に擁立する方針を決定。野党による統一候補構想から離脱する意向を示している。国民民主が浮動票の多い東京選挙区に候補者を立てれば「かなり高い確率でトップ当選を果たすだろう」(連合東京関係者)と見られ、目下、トップ当選に相応しい候補者選びの最終段階にある。

一方、昨年7月の都知事選で旋風を巻き起こした石丸伸二氏(42)が率いる地域政党「再生の道」の動向にも関心が寄せられている。石丸氏は6月に実施される都議選に向けて候補者を公募し、1100人以上の応募が殺到。都議選の全選挙区に最大60人を擁立する方針だ。都議選への多数擁立の余勢を駆り、参院選東京選挙区へも擁立する方針だ。具体的な候補者選定はこれからだが、水面下で国民民主との連携も囁かれており、その動きから目が離せない。

サプライズ効果を狙う「後出しジャンケン」

東京選挙区の現職、武見敬三参議院議員(本人のXより)

政界関係者は「現段階で東京選挙区の当選圏入りは国民民主とれいわ、共産、立憲、自民の各1人が確実視されている。残る2議席を石丸新党と(2人目の)自民、立憲が争う構図だ。いずれにしても大激戦が予想されており、自民の2議席獲得は容易ではない」と分析する。自民都連内では「大逆風の中で、共倒れを防ぐために武見氏だけを擁立すべきではないか」との声も強かったが、知名度が高い菊川氏を擁立し、日本医師会や商工関係など既存の組織票は武見氏に集め、女性票や浮動票を菊川氏に取り込んでもらうことで「2人揃って当選が十分見込める」と判断しているようだ。

とはいえ、参院選まで3カ月の間があるため、自民には選挙情勢を注意深く見守りたい考えもある。東京選挙区は「後出しジャンケン」が常態化しており、有力候補が公示直前に出馬表明し、サプライズ効果を狙う傾向が強まっているからだ。自民はぎりぎりまで情勢を見極め、その結果次第では菊川氏を東京選挙区ではなく全国比例候補に回す案も練られているという。

すでに自民は全国比例候補として「ハンカチ王子」で知られる斎藤佑樹元日本ハム投手(36)の擁立も視野に入れている。斎藤氏は現在、日本テレビでキャスターを務めているが、以前から国政に関心があり、前向きな姿勢を見せているという。

立憲民主は異論を押し切り「蓮舫擁立」

立憲民主の全国比例の目玉、蓮舫氏(写真/宮嶋)

一方、立憲民主は昨年7月の東京都知事選に出馬・落選した蓮舫元参院議員(57)を、全国比例から擁立する方向だが、党内には昨年参院議員を辞め、都知事選で3位に沈んだ蓮舫氏を再び参院選候補として担ぎ出すことへの異論も根強い。

同党の参院全国比例を巡っては、19年参院選で当選して改選を迎える労働組合出身の5人の組織内候補に加え、今回は20年に国民民主から立憲民主に移った労組出身の郡山玲氏(51)も擁立する。さらに小沢一郎選対本部長代行が推す森ゆうこ元参院議員(68)も出馬予定だ。参院全国比例で当選するには「1人当たり100万票」の獲得が必要とされる。

そこへ蓮舫氏が加われば、連合が推薦する労組出身議員が押し出される恐れがあり、連合の芳野友子会長は否定的だ。それでも立憲執行部は「全国的に高い蓮舫氏の知名度を生かさない手はない」と、異論を押し切り擁立する方針だ。そうなれば連合の反発は避けられない。

石破政権下で「岩盤」保守層が「自民離れ」

これに対し支持率が急伸している国民民主は、3月31日付で首相補佐官を辞任した矢田稚子氏(59)を全国比例に擁立する準備を進めている。

電機連合出身の矢田氏は元国民民主参院議員で、再選を目指した22年参院選で落選。23年9月の内閣改造の際、当時の岸田文雄首相から雇用・賃金担当の首相補佐官に抜擢され、石破政権でも再任されていた。しかし、「年収の壁」を巡る協議で国民民主と自民・公明両党の協議が決裂。「パイプ役を果たせなかった」と、矢田氏への批判が高まり、辞任に追い込まれた。とはいえ、参院議員や首相補佐官として経験を積んだ矢田氏は「新人議員が多い同党の中で、幹部候補として貴重な戦力になる」(同党関係者)と擁立する方針だ。

国民民主は保守の論客、山田吉彦氏を擁立(同党HPより)

先に同党は全国比例に東海大教授の山田吉彦氏(62)の擁立を決めた。保守の論客である山田氏は故安倍晋三元首相と近く、海洋安全保障の専門家として有名だ。山田氏が国民民主から出馬するのは、石破茂政権下で「岩盤」保守層の「自民離れ」が進んでいる証拠である。

さらに同党は維新で国会議員団政調会長を務めた元衆院議員の足立康史氏(59)を大阪選挙区で擁立する方針だ。足立氏は維新批判を繰り返したとして党員資格停止の処分を受け、昨年の衆院選に出馬せず、政界引退を表明していたが、国民民主から改めて立候補する道を選んだ。

全国比例で国民民主が自民を上回る?

「消費減税が焦点!」参院選全国比例で自民党にどこまで迫るか(玉木代表のXより)

国民民主は支持率が大きく伸びる中、全国比例での大量得票が確実視されるが、候補者選びが遅れており、先の衆院選と同じく「比例当選を取りこぼす」恐れがある。このため「自民や立憲など他党の選考から漏れた人材にも手を伸ばしている」(政界関係者)。

全国比例で国民民主が自民党にどこまで迫るか。自民党内には「このままだと自民の得票数を上回るかも知れない」(自民党閣僚経験者)との悲観が広がっている。

   

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