24年11月期も多額の赤字が見込まれ、債務超過転落が濃厚。頼みの綱の丸紅は「救済に乗り出さない」との見方が広がる。
2025年3月号 BUSINESS
丸住製紙のホームページ
名門製紙会社「丸住製紙」(愛媛県四国中央市)の業績不振が深刻で、信用不安に拍車がかかっている。総合商社の丸紅が3割の株式を保有する筆頭株主だが、紙パルプ業界では「丸紅は丸住の救済に乗り出さない」との見方が広がっている。
丸住製紙の創業は1919(大正8)年。和紙の生産からスタートし、現在の主力製品は印刷用紙と新聞用紙となっている。新聞用紙の需要落ち込みは著しいものの、2023年11月期の売上高は458億円に達し、従業員数は500名規模、多くのグループ会社も抱える有力企業だ。星川知之社長は王子製紙の社長などと並んで「日本製紙連合会」の常任理事をつとめるなど、非上場とはいえ業界で一目置かれている。
しかし、近年の損益の悪化は著しい。売上不振と円安、原料高、燃料高にリストラ損も加わり、19年11月期から23年11月期まで5期間の最終損益は▲52億円、▲60億円、8億円、▲117億円、▲150億円と目を覆うばかり。23年11月期の時点では債務超過ではないものの、24年11月期も多額の赤字が見込まれており、債務超過転落が濃厚だ。
バンクフォーメーションは三井住友信託銀行、広島銀行、みずほ銀行、中国銀行(岡山)の4行が主力で、ほかに政府系や地銀など多数の取引行があるが、はっきりしたメインバンクがない。シンジケートローンを含む借入金の総額は「23年11月期末で約430億円だったが、足元では赤字補填のため約480億円まで膨らんでいる」(金融筋)。もちろん返済はリスケしており、在庫や売掛金も銀行団の担保に入っている。24年6月には資産管理会社が所有する星川一治会長の自宅に初めて、三井住友信託と広銀の根抵当権(極度額合計15億円)が設定された。
こうしたなか昨年暮れには「公租公課の滞納があり、地元自治体が滞納処分にむけて丸住製紙の取引先に調査票を送付した」(信用調査会社)との情報が流れた。
事情通は「実は公租公課の滞納は今回が初めてではない。これまでも資金繰りは本当にカツカツで、なんとか凌いできたのが実情」と明かす。取引先にとっては丸紅の後ろ盾が頼りだが、24年初めころには、別の大手商社系企業が「丸紅の支援姿勢がはっきりしない」として取引中止を決断したとされる。
前出事情通によれば「すでに丸紅に助けてもらうのは諦めた。KPMGや再生コンサルの経営共創基盤が入って支援企業を探している」という。
丸住製紙は22年に、同じ四国中央市を創業地とする大王製紙と技術提携基本契約を結んでおり、丸住の大江工場と大王の三島新工場は瀬戸内海の入江をはさんで目と鼻の先にある。「丸住は大王が助けるのがいちばん理にかなっていると思うが、多額の借金を抱えたままでは難しいかもしれない」(業界関係者)。
丸紅は24年末機構改革を発表し、来期から紙やパルプを扱う「フォレストプロダクツ本部」はアパレルなどの「ライフスタイル本部」に統合される。丸紅の紙パといえば辻亨、勝俣宣夫と2代続けて社長を輩出したこともある金看板だが、いまや当時の面影はない。本誌は丸住に税金の滞納などについて質問状を送ったが「回答は差し控える」とのことだった。