連載/病める世相の心療内科/スマホを置き、満天の星を眺めれば/遠山高史・精神科医

2025年2月号 LIFE [病める世相の心療内科]

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畑で冬の星空を見ながら酒を飲むのが楽しみとなった。いくら着込んでいても寒さが骨身に沁みるが、おかげで、焚火で温めた熱燗は格別にうまく感じる。時々、流れ星が横切る。関東南部でもうっすらと天の川も見える。最近は、虫のように空を這う人工衛星も見える。ふと、視覚情報には時間が含まれていないということに思い至る。おうし座のアルデバランから届く光は約65年前、おおいぬ座のシリウスからの光は約8年前のものである。それが同時に見える。昭和と平成がごっちゃになっている。これは、自然が織りなす壮大なフェイクではないか。人が利用している情報のほとんどを占める視覚情報は、時間を無視して並べることができ、簡単にフェイクを作り出せる性質がある。パソコンに表示された無数の情報は、まるで星空のように視界に広がり、人を錯覚に陥らせる。写真や画像を簡単に制作でき、十年前の出 ………

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