東京・恵比寿のガーデンプレイスは「バブル」の残り香が漂う街である。開業した1994年は、すでに日本のバブル経済が崩壊した後ではあったが、旧エビスビールの工場跡をオフィスとカルチャー、ショッピングの複合施設にするという構想は、まさにバブルの時代の着想であった。異常な狂奔経済の時代のコンセプトによって人工的に造られた街は、つまりバブルの遺産である。そんな摩天楼の23階に、その施設はある。防衛イノベーション科学技術研究所――。そこは2024年10月に開所したばかりの、「日本版ＤＡＲＰＡ（ダーパ）」と呼ばれる防衛省の極秘の最先端研究所であった。人の出入りの激しいガーデンプレイスだが、ここはエレベーターを降りると、厳重なセキュリティが施され、ICカードをかざさないと入室できない。すれ違った男は見知らぬ私にいぶかしむ視線を送る。廊下の天井に取り付けられた監視カメラ ………