連載/病める世相の心療内科/若者よ「心地よい環境」に浸るなかれ/遠山高史・精神科医

2024年11月号 LIFE [病める世相の心療内科(94)]

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代表的な精神病とは、一度成熟したうえで、環境などの圧力から破綻に至り、幻覚や妄想の発現がある病態と定義される。この頃、思春期前後からの幅広い層で、成熟する前にはっきりした原因を認めにくいが引き籠もりがちとなって来院する人が増えている。活発な幻覚や妄想の発現はないが、未熟さが目立ち、そのため、状況との不適応を起こし、結果として、引き籠もりというあまりエネルギーのいらない生活様式をとるに至ったと考えられる。自殺念慮を訴える患者もすくなくないが、すぐに実行するわけでもない。ただ、押しなべて、どのケースも心的エネルギーが著しく低下している状態である。いずれも典型的な精神病の症状を欠き、診断をつけにくく、幻覚や妄想の発現もほとんどない。幻覚や妄想の発現にも自殺するにも、一定のエネルギーが必要である。そのエネルギーすら十分ではないようなのである。こ ………

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