ガイア再建は、藤澤信義社長の個人的なサイドビジネスとして進められていく公算。
2024年10月号 DEEP
藤澤信義社長(JトラストHPより)
「オーシャンセブン」――。2023年11月に経営破綻したパチンコホール大手「ガイア」の最終スポンサーに先頃決まったのは、そんな名前の実態不明の会社だ。50億円のDIPファイナンス枠を当初供与しスポンサー基本合意書まで交わしたJトラストは結局のところ支援企業の「探索」にとどまり、民事再生スキームからは離れるらしい。
登記簿などによれば、オーシャンセブンは1987年に設立され、現在は宇都宮市に本店が登記されている。資本金は418万円。目的欄には医療機関に関するコンサルタント業務などが並び、パチンコ関連の記載はない。7年前まで東京・南青山に事務所を置き事業者金融を手掛けていたようだが、現在、ネット上に電話番号などは見当たらず、貸し金業登録もされていない。営業実態はなさそうだ。
同社の素性を探る手掛かりは登記された建物にある。その事務所ビルを33年前に建てたのはアイフル傘下にあった消費者金融会社「ワイド」で、8年前から所有するのは「クロスブリッジ」なる会社だ。現在は東京・南麻布に本店が登記されているクロスブリッジの役員欄に並ぶのは、由莉夫人をはじめ、Jトラスト社長・藤澤信義氏の親族ばかり。10年の設立当時、代表取締役だったのは藤澤氏本人だ。クロスブリッジは同氏の個人会社とみなしてよいだろう。
ライブドア幹部だった藤澤氏は08年以降、旧大証2部上場のイッコー(現Jトラスト)と非上場の「ネオラインキャピタル」を両輪に過払い金返還債務で青息吐息の貸し金会社を次々と買収した。前出のワイド(後にアペンタクル)もその1社だ。この逆張り戦略の要諦は、ローン債権の回収を猛烈に進める一方で過払い金債務は返還を極力渋るというもの。過払い金債務の巨大な塊を一手に引き受けたネオライングループは12年、謎の「第三者」に丸ごと委ねられ、表向き、藤澤氏の手を離れた。
ところが現在、そんな残骸企業は宇都宮に佇む件の藤澤氏関連ビルに蝟集する。前出のアペンタクルや、プロミスから買収した「サンライフ」「セシールクレジットサービス」(現・咲永)がそれらだ。そして、焦点のオーシャンセブンで代表取締役の越智貴也氏はサンライフの代表なども兼務している。これら企業群は藤澤氏の息が掛かった「裏部隊」に違いない。
じつは、藤澤氏は前出のクロスブリッジと同じ住所に「表参道キャピタル」なる個人会社も持っている。同社はガイアグループが破綻直前に借りた不可解な巨額債務の整理に登場する。
ガイアの実質グループ会社だった「MG建設」は昨年9月29日~10月27日、千葉県の「オフィス東海」なる会社に手形21通を差し入れ、63億円もの資金を借りていた。これほどの巨額資金を用立てた割にオフィス東海の背景はよく分からない。代理人弁護士は朝鮮総連と親密な事務所の所属だったりする。三井住友銀行が最後、創業一族を追放して法的整理になだれ込んだのも、この巨額の資金導入が引き金だったものと見られる。
今年4月、藤澤氏の表参道キャピタルはこのいわく付き債権をオフィス東海からわざわざ買い取っている。こう見てくると、結局、ガイア再建はこの先、藤澤氏の個人的なサイドビジネスとして進められていく公算が大きい。そこまでのめり込む理由は一体奈辺にあるのか……。