連載/「ウクライナ・ダイアリー」/激戦地で夫を喪った女性軍医マルタ/古川英治(キーウ在住)

2024年9月号 LIFE [ウクライナ・ダイアリー]

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「いまからキーウに戻ります」東部ドンバスの前線にいる50代の軍医マルタ・ユズキヴから7月末、メッセージが届いた。「夫が月曜日に(激戦地)チャシウ・ヤールの近くで戦死しました。心が壊れそう」私はひどくショックを受けた。2022年2月にロシアの本格的な侵略が始まってから、最も身近に感じた死だった。マルタとは、ロシアの侵略の一カ月前、民間人の軍事訓練を取材した時に知り合った。彼女と夫のセルヒーはともに医療関係の仕事をしていたが、ロシア軍が国境を取り囲むなかで、最悪の事態に備えた。「夫と話し合って、何があっても祖国を離れないと決めた。黙って占領を受け入れはしない」その言葉通り、2人はロシアの侵略に直面すると、13歳の双子の息子を親戚に託し、首都の防衛に志願した。その後も北東部ハルキウ州、ドンバスへと転戦し、2年半にわたり戦い続けてきた。マルタが訓練や休暇で ………

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