「特ダネ」再掲/「野党顔負け」のブロガー/石破茂が次の首相に躍り出る/2023年12月号より

夜な夜な思いの丈を綴る舌鋒は鋭さを増すばかり。不遇をかこつ晩年を送るつもりはなさそうだ。

2024年7月号 POLITICS

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「野党顔負け」のブロガー

<減税や給付の規模や対象ばかりが議論されていますが、物価高の影響は当然、税の対価としてのサービスを実施する政府にも及ぶのであって、サービス水準を維持するとすれば、そこに「還元」する原資は存在しないのではないか。加えて「異次元の少子化対策」「防衛費の大幅増」などの行政サービスに要する費用は増大するのですから、「還元」などしている余裕はないはず>

自民党の石破茂元幹事長が綴るブログは野党顔負けの鋭さだ。

<総理が「経済、経済、経済」と連呼したのに対し、野党党首が「給付、給付、給付」「改革、改革、改革」「賃上げ、賃上げ、賃上げ」と連呼するさまは、まさしくイメージ先行のワンフレーズ・ポリティクスを象徴している>とこきおろす。

2016年に地方創生相を退いて以来、安倍・菅・岸田政権下で干しに干された石破氏は終わった人」と囁かれてきたが、ここに来て各社の世論調査で「次の首相候補」の軒並み上位に躍り出た。

石破氏本人が言う通り「無党派層に強い」のは歯に衣着せぬ正論が受けているからだろう。

<税負担能力の上がった個人(この10年で1億円以上の純金融資産を持つ世帯は81万世帯から149万世帯へとほぼ倍増)や、円安で空前の利益を上げている大企業などは担税能力があると考えるべき。「富裕層や大企業が海外に逃避してしまう」とよく言われますが、本当にそうなのかはきちんとした検証が必要>

「党内野党」を貫く石破氏への期待がにわかに高まっているのは確かだ。

11月9日、岸田首相が年内の解散・総選挙を見送る意向を表明した。9月の内閣改造で起用した副大臣・政務官54人全員が男性だったことが批判を浴びたうえ、不祥事が続出。山田太郎・前文部科学政務官と柿沢未途・前法務副大臣が辞任に追い込まれ、税金滞納が発覚した神田憲次財務副大臣も辞任した。

政権浮揚の切り札として定額減税を目玉とする巨額の経済対策を打ち出したが「選挙目当ての人気取りと見透かされた」(立憲民主党の岡田克也幹事長)。内閣支持率は危険水準(軒並み20%台)に落ち込み、年内解散どころではなくなった。

来年9月の総裁選での再選を目指す岸田首相は解散戦略を練り直し、来年度予算成立(来年3月)後の解散を目論むが、「野党が多弱とはいえ、国民から見透かされた『増税メガネ』の看板では戦えない。結局、首相は解散できず、総裁選にも出られなくなるだろう」と、選挙通の自民党議員は予想する。

その場合、「ポスト岸田」の筆頭は、茂木派の領袖、茂木敏充幹事長(68、当選10回)だが、人気はさっぱり、「次の首相候補」でも下位だ。本人も「令和の明智光秀にならない」と語っており、非常に動きにくい。片や、石破氏(12回)は岸田首相(10回)、野田佳彦元首相(9回)と同じ1957年生まれの66歳。機はとうに熟しているが、前途は極めて険しい。

15年に20人で発足した石破派は21年に解散し、今も会合を続けるのは数人だ。それでも菅義偉前首相、二階俊博元幹事長と共に非主流派グループを結集し、河野太郎デジタル相、小泉進次郎元環境相らが名を連ねれば「疑似政権交代」の構図はできる。

<橋本内閣時代、減税についての説明が揺らぎ大敗を喫したことがありました。国民に対してストーリー性のあるわかりやすい説明が必要です。国民はその場しのぎの解決など求めていないのであり、我々は国民と正面から向き合い、説得する姿勢を持たねばなりません>

夜な夜な思いの詰まった長文を書き続ける孤高のブロガーの舌鋒は鋭くなるばかり。不遇をかこつ晩年を送るつもりはなさそうだ

   

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