連載/「ウクライナ・ダイアリー」/爆発音は「日常のバックグラウンド」/古川英治(キーウ在住)

2024年7月号 LIFE [ウクライナ・ダイアリー]

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黒海に面する南部オデーサの週末、ビーチが多くの人でにぎわっていた。初夏の日差しのなか、若者が海に飛び込み、家族連れやカップルが日光浴を楽しむ。空襲警報が鳴っても、みなお構いなし。その後、爆発音が聞こえてきて、私は少し緊張したが、周りは誰も動じていない。隣で寝そべっていた女性に「いまの音は?」と話しかけると、「ロケットじゃない?」とそっけなく答えた。ロシアの侵略が3年目に入り、首都キーウでも厭戦気分を感じる場面が増えている。政府が計画する追加動員への反発やヴォロディムィル・ゼレンスキー政権への不満を口にする人も多くなった。それに、オデーサのビーチの様子も含めて、みな戦争の現実を遮断するような傾向があるのではないか。そんな印象をオデーサ大学の哲学者オクサーナ・ドヴホロロワにぶつけると、「現実から目を背けているのではなくて、現実の中で生きてい ………

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