日本の農村から消えゆく鯉のぼり
2024年6月号 LIFE [病める世相の心療内科(89)]
この5月5日、畑に鯉のぼりをあげた。以前にも述べたが、農地に船の形をした手作りの小屋を建てたところ、無許可の違法建築とされ、撤去させられた。その場所に、鯉のぼりをあげたのである。長さが8メートルぐらいあり、住宅地ではあげられない大きなものである。畑の周辺は、数キロ先まで見渡せるまだ青い穂の麦畑が広がって、撤去した小屋は、大海に浮かぶ木造船のようであった。船がダメというなら、せめて緑の海にクジラを泳がせてみようと考えたのである。点在する農家のどこにも鯉のぼりがあげられていないのが、異様でもあった。 鯉のぼりをあげると、近くに住む80歳ぐらいの老人が話しかけてきた。昔は、矢車のついた大きな鯉のぼりをあげるのが村の風習だったのに、今や一つも見られなくなったと嘆いていた。鯉のぼりがなくなり、増えているのは、草に覆われた空き家である。 数年前、90代の ………
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