連載 病める世相の心療内科

防衛的作業が膨らむ「他罰社会」

2024年5月号 LIFE [病める世相の心療内科(88)]

クリニックの廊下で滑って、転んだ時に腕をついて骨折した人物が半年ほどして、廊下に油がまかれていたと抗議してきた。滑った日の前日に、廊下に沿って設置されていた調理用の電気器具の取り換え工事があったということを、どこかで聞き及んだようであった。工事した会社に問い合わせたところ、取り換え工事だけで油をまくなどあり得ないとの回答。そう説明しても、訴えの本人は容易に引き下がらず、自分が滑ったのは廊下が滑りやすかったせいで「滑りやすいので注意」との張り紙がなかった。それは管理責任となると主張してきた。その場所で転んだ人物はこの10年間、訴えの当人しかいなかったのであるから、滑りやすかったとの主張も通らないと思え、あなたの靴下に油が塗られていたのでは、と言いたくなったが、やめておいた。財布に入れたダイヤモンドの指輪が無くなったのは、財布の底に穴が空いて ………

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