東京五輪談合事件/東京地裁刑事16部「判決書」に大間違い/裁判長の執務能力が疑われる事態

号外速報(03月22日 06:20)

2024年4月号 POLITICS [号外速報]

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夜10時を過ぎても灯りが消えない東京地方裁判所(東京・霞が関)

東京五輪・パラリンピックの大会運営業務を巡る談合事件の公判を担当している東京地裁刑事16部(安永健次裁判長)が事実と異なる内容の判決書を作成したり、全地裁平均1・3~1・7カ月の公判間隔が4カ月以上開いたりしていることが関係者の話でわかった。審理の内容以前に執務能力が疑われる事態に陥っているとして、裁判所法に基づき、最高裁などに監督権の発動を求めるべきだという意見も出ている。

事件の中身を理解しているのかも疑しい

東京地裁刑事16部の安永健次裁判長(司法大観より)

事件では、発注側の大会組織委員会大会運営局の森泰夫元次長、電通グループなど広告会社3社、セレスポ、フジクリエイティブコーポレーション(FCC)などイベント制作会社3社と各社の担当だった幹部社員6人が独禁法違反(不当な取引制限)の罪で起訴され、16部に係属した。

森氏は起訴事実を全て認め、16部は昨年12月12日、懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡し、確定している。関係者によると、森氏以外は、程度の差はあるものの、起訴事実を一部または全部争っている(FCCは公判前整理手続き中)。

内容が事実と異なっているのは森氏の判決書。

各社による不当な取引制限の合意について「対象となった全26の組織委員会の設定に係る各会場単位のうちテストイベント計画立案等業務委託契約について一般競争入札が行われた25の会場単位については、うち24において受注予定事業者が受注するに至り」と判決書には書かれているが、実際に一般競争入札が行われたのは26会場単位で、うち1件は応札社がゼロの入札不調だった。談合を認定した有罪判決には、取引制限通りの受注ではなかった入札不調は都合が悪かったから、なかったことにしたのだろうか。

また判決書には「大多数については受注予定事業者以外の事業者が前記入札に参加することはない」と書かれている。しかし、テストイベント計画立案等業務委託契約の一般競争入札では、26会場単位のうち9会場単位で、検察官が受注予定者と主張する事業者以外が入札に参加している。26分の17が「大多数」なのか、これも恣意的な認定といえそうだ。

さらに判決書は「テストイベント計画立案業務委託契約については一般競争入札により調達」としているが、契約と調達の区別が付いていないような認定であり、自白事件とは言え、事件の中身を理解しているのかも疑しい。この3点はいずれも執務能力に重大な疑問を投げかけている。

しかも検察官は、森氏以外の被告人の公判で、この判決書を証拠とするよう請求しているということであり、誤った内容の判決が他の被告人の事件の公判に与える影響も無視できない。

裁判所法82条の「不服申し立て」の対象か

一方、第1回公判が昨年10月17日にあり、起訴事実を否認したセレスポの法人と担当幹部の第2回公判は今年2月27日まで開かれなかった。

最高裁が3月15日に公表した「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第10回)」によると、全地裁の刑事一審の平均開廷間隔は、被告人が起訴事実を全て認めた自白事件で1・3カ月、一部または全部争った否認事件は1・7カ月となっている。セレスポの公判間隔は、実に否認事件の2倍を超えている。

ベテランの司法記者は「執務能力に問題があり、裁量を逸脱する事態となっているのではないか。裁判所法80条は最高裁、高裁、地裁による職員の監督権を定め、82条は『裁判所の事務の取扱方法に対して申し立てられた不服は、80条の監督権によりこれを処分する』としている。処理要領で『裁判官に与えられた自由裁量や書記官等に与えられた判断権を逸脱した場合には、司法行政の監督権が及ぶから…82条の不服の対象となる』とされているので、各被告人は82条の不服申し立てを検討した方がいいかもしれない」と話している。

   

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