ぼったくり店の摘発で発覚した営業本部長の不正。山口銀行、近畿産業信組、三十三銀行など、こぞって融資してきた金融機関は真っ青。
2024年4月号 BUSINESS

全東信のHP
警視庁保安課は1月24日、クレジットカード決済代行会社「全東信」(大阪市中央区)の東京支社営業本部長加藤祐亮(43)ら3人を私電磁的記録不正作出・同供用容疑などで逮捕した。加藤は担当していた複数の加盟店について、本来の経営者と異なる人物名義でカード会社に取り次いで加盟店審査を通し、店からキックバックを受け取っていた疑いがある。
全東信はクレカ業界では有名な存在だ。銀座や北新地などの夜の店は軒並み加盟店といっても過言ではない。1987年設立の「大阪南飲食事業協同組合」を母体とし、いまでは加盟店が三大都市圏中心に約20万件に達する。
飲食店で客がクレカを使った場合、通常カード会社から店への入金は月に2回。たとえば毎月1日~15日までの売上金が月末に入る。それが全東信を経由すれば、カード利用日から最短4日後に入金される。資金力の乏しい個人店にとっては実に頼もしい。ホステスには日払いや週払いが必要だ。多少高い決済手数料を負担することにはなるが、そもそも個人店は大手のカード会社が相手にしない。全東信は夜の街の決済インフラとして存在感を発揮しているというわけだ。コロナ禍で業績は落ち込んだが、足元では急回復しており「今年度の決済金額は過去最高の8千億円に達する」(関係者)という。
一方で株主は髙山萬保社長のみ。かねてよりガバナンスについて不安視されてきた。事情通によれば、今回の摘発は新橋のぼったくり店の被害者がクレカで決済していたことが端緒。そうした違法営業の店では本来クレカが使えないため、店は客に現金の持ち合わせがなければATMまで同行してカネを巻き上げる。ところが加藤らは店に無関係の女性を店舗責任者と偽り、カード会社の審査を通していた。「カード会社がもっとも嫌う不正」(金融筋)である。しかも加藤は東京の営業本部長という幹部だった。
全東信は2月19日に加藤を解雇し、翌日4ページの「調査報告書」を関係先に送付した。冒頭で「今後の事業継続のため(中略)本件の詳細を調査し(同)再発防止策を策定する」と危機感を露わにしたものの、調査に社外の専門家が加わった形跡はなく、調査実施者は東京を所管するT副社長。加藤の直属の上司である。報告書によれば、加藤が営業担当の店舗955件のうち32件について「当社からの再三の連絡にもかかわらず連絡がつかない」として加盟店契約の解除を決めた。一方「同様の不正申込みを行った従業員の存在は確認できなかった」という。
事件でうろたえているのはカード会社だけではない。全東信の取引金融機関は約80社、借入金は約1500億円にのぼる。加盟店への支払いに備えて常時キャッシュを確保する必要があり、借金も膨らむ構造だ。全国の地銀、信金などがこぞって融資しており、残高上位には山口銀行、近畿産業信組、三十三銀行(三重)などが名を連ねる。
あるキャッシュレス決済会社の関係者は「以前から、営業開拓先が全東信の既存加盟店とわかった場合、以後接触するなと会社から指示されてきた。今回の事件で納得した」と明かす。本当に組織的な不正はないのか、全東信は本誌の取材に「一切お断りします」と回答した。