源氏物語を「楽しみ尽くす」方法/「秘めごと」の佳境「空蝉」「朧月夜」「六条御息所」/半世紀の愛好家・柳辰哉

2024年2月号 LIFE [成人(おとな)の恋の物語]

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源氏物語には、個性あふれる女性が数多く登場します。光源氏の一生にそれぞれ長期間、影響を与えただけでなく、これらの女性たち自身の曲折の多い生涯を紫式部は描いていて、そこだけ抽出しても読みごたえある単独の小説のように味わえます。

「苦い夜」を体験させた誇り高き人妻

五十四帖で最初に描かれる秘めごとは、源氏が十七歳のときの、空蝉(うつせみ)と呼ばれる人妻との一夜です。空蝉は上級貴族である上達部(かんだちめ)の家に生まれ、父親が宮仕えさせたいと考えていましたが、父に先立たれてから零落し、地方官の受領(ずりょう)だった伊予の介の、歳の離れた後妻になっていました。忌むべき方角を避ける方違(かたたが)えのため源氏は伊予の介の先妻の息子の邸宅を訪れ、空蝉もその屋敷に泊まっていました。中川という川のほとりで、今の京都市上京区、作者の紫式部が住んでいた所のすぐそばです。中流階級の女性に興味 ………

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