連載 病める世相の心療内科

70代の生真面目な夫に妻の怒り

2024年1月号 LIFE [病める世相の心療内科(84)]

セレブな夫をもつ60過ぎの主婦が、夫に連れられ受診してきた。二人の子供が家を出て数年経つが、この頃、妻が家事をしなくなり、入浴も臭くなるからと促してようやくさせている。日がな呆然とし、様子がおかしいので、心療内科に連れていく。子供がいなくなった喪失体験によるうつ病ではないか、と抗うつ剤を処方されたが改善がみられない。私のところが5件目という。妻の表情は暗くうつむいて、私の問いにもまともに答えない。年齢を聞くと26歳などと言う。しかし、状況は把握している様子で、認知症にしては答えがわざとらしい。時々うろうろするが家から出ることもなく、認知症の症状を欠いていた。彼女はうつ状態に違いないが、理由がわからないと夫は首を傾げる。裕福な生活を自慢したいらしく、室内をスマホで撮ったものを見せてくれた。広いがスキのない作りの高級マンションで、冷暖房、IH式コ ………

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