連載 病める世相の心療内科

文明が生んだ未曽有の不安社会

2023年12月号 LIFE [病める世相の心療内科(83)]

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不安神経症の時代と言われる。患者が増えるのも無理はない。人類はテロや戦争に明け暮れ、コロナなどの疫病、地球温暖化、AIの悪用や核兵器など、脅威が尽きない。国内は地震、洪水など災害が絶えず、人は短絡的な犯罪に走り、おまけに町中にはクマが出現し、物価の高騰で、経済の先行きも暗い。不安を喚起する情報が日夜伝えられ、リスクに備えよと迫ってくる。迫りくる危険を予測し、対処できれば、つまり危険と戦い、身を護りうるとわかれば、ある程度は安心できる。脳は基本的にそのための機能から発達してきた。文明とは、予測不能の自然に対応するため、法というルールを決め、共同で農作業を行って食料確保を効率化し、外敵襲来に備えた城壁や武器により安心を得るべく、人類が編み出したものである。ところが、今や文明そのものが予測不能な、対処の難しい事象を生み出している。テロの発生は予 ………

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