楽天投信と同様の抜け道探しは今後も続きそう。税務当局の判断次第で「新NISA不適格」として課税される恐れも。
2023年12月号 BUSINESS
批判を浴びた「楽天投信投資顧問」
岸田政権の看板施策「資産所得倍増プラン」の核となる新NISA(少額投資非課税制度)が2024年1月からスタートする。新NISAは、投信を毎月積み立てる「つみたて投資枠」と、株や投信を購入できる「成長投資枠」から成り、年間投資額の上限はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、生涯投資上限額は1800万円(うち成長投資枠が1200万円)。非課税で投資できる規模がこれだけあれば、太宗の人は新NISAの枠内で全ての投資ニーズを満たすことになると考えられる。
一方、運用会社からすれば自社の投信が新NISAの適格商品に該当しなければ見向きもされなくなってしまう。そうした危機感の下、新NISAの適格商品にするために、抜け道を探るよう潜脱行為がみられるようになっている。
新NISAの成長投資枠適格商品を巡っては、3つの除外要件(①信託期間が20年未満、②毎月分配型、③ヘッジ目的以外のデリバティブ使用)が定められている。このうち毎月分配型は、シニア層を中心に多くの支持を集めているが、元本を毎月取り崩して分配するため複利効果が剥落し、新NISAが目指す長期投資にそぐわないことから除外された。2カ月に1度分配する隔月分配型ならば新NISAの要件をクリアするため、隔月分配型を成長投資枠に届け出る動きが目立っているが、その矢先に大きな批判を浴びたのが楽天投信投資顧問だ。
楽天投信は「インカム戦略ポートフォリオ」と銘打つ隔月分配型の投信2本を成長投資枠の対象商品として届け出た。一つは奇数月に、もう一つは偶数月に分配金を支払うタイプだ。これをそれぞれ持ってもらえば毎月分配型と同様の商品性となる。そのため、「規制の網をかいくぐることが狙い」と疑いの目を向けられた。結局、楽天投信は偶数月に分配金を支払う投信の申請を取り下げる羽目になったが、同様の抜け道探しは今後も続くことが予想される。
すでに日興アセットマネジメントは、これまで毎月分配型だった高配当の株式投信2本を新NISAの適格商品とするため、隔月分配型に変える約款変更を進めている。いずれも世界に投資する同タイプの株式ファンドで、一つは奇数月分配、もう一つは偶数月分配に設定していることから、「毎月分配の信奉者に2本持ってもらう魂胆が見え見えだ」(運用会社幹部)。
ほかにも、除外要件の一つであるはずのデリバティブ(金融派生商品)を使用した投信も成長投資枠の適格商品として届け出がなされている。ファイブスター投信投資顧問の「日経225ニュートラルファンド」は、値上がりが見込める銘柄の現物買いと、日経平均の先物の売り建てを組み合わせたファンドであり、金融派生商品たる先物の売り立てによってデリバティブを使用していると考えられる。ところが、先物の売り立てはあくまでヘッジ目的だと「自己判断」しているようだ。
そもそも成長投資枠の適格性の判断は運用会社に委ねられており、投信協会が公表している成長投資枠の商品リストも運用会社から届け出があったものを取りまとめているに過ぎない。それ故、潜脱行為の投信を巡り、税務当局の判断次第では「新NISA不適格」として課税される恐れもある。今後も抜け道探しが横行すれば制度の根幹をも揺るがしかねない。
成長投資枠を巡っては、株や投信を売却するとその分の生涯投資上限額が復活するため、販売会社が回転売買に悪用する不安も指摘されている。政府が進めている資産運用業界の抜本改革の成果が待たれるばかりだ。