「産総研スパイ事件」の世論誘導

逮捕・起訴された中国人技術者は、不可解にも研究データ送付を隠そうとしていなかった。

2023年8月号 BUSINESS

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東京地検は7月上旬、国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市)に勤務していた権恒道・上級主任研究員を不正競争防止法違反罪で起訴した。6月中旬に逮捕された権被告は、自身が産総研で研究していたフッ素化合物に関するデータを中国企業に漏洩させていた。日本の公的研究機関で外国人による技術漏洩が表面化したのは初めてだ。

産業スパイというより窃盗

この事件を新聞やテレビなどは「中国人技術者による技術漏洩事件」などと大々的に報道した。だが、産業スパイ事件に詳しい弁護士は「機密情報の漏洩事件としては手口が稚拙すぎる」と疑問を示している。事件を深掘りすると、捜査にあたった警視庁公安部の思惑も透けて見えてくる。2002年から産総研で研究員を務めてきた権被告(起訴時点で懲戒解雇)は、地球温暖化防止につながるフッ素化合物の研究に取り組んできた。同被告は中国人民解放軍と関係が深い ………

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