特別寄稿 「日本の低賃金」を打破する処方箋/評論家・中野剛志

「構造的賃上げ」を目指す岸田政権は、成長戦略を「利潤主導型」から「賃金主導型」へと戻さなければならない。

2023年8月号 BUSINESS [間違った「成長戦略」]

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岸田政権は、「構造的賃上げ」を最重要課題として位置づけている(*1 https://jp.reuters.com/article/japan-economy-idJPKBN2X603I)。その認識自体は正しい。問題は、そのための具体策、つまり「構造的賃上げ」を可能とするような成長戦略というものを理解しているかどうかである。ほとんど知られていないが、実は「成長戦略」には、二つのタイプがある。一つは、「賃金主導型」成長戦略である。もう一つは「利潤主導型」成長戦略である。「賃金主導型」成長戦略は、賃金の上昇を原動力にして、経済全体を成長させようとするものである。これこそ、本来、岸田政権が採用すべき成長戦略であろう。

雇用の流動化は賃金を抑制する

では、何が賃金を上昇させるのか。一つは、労働者が不足気味であることだ。今の日本は、本来であれば、賃金上昇のチャンスと言える。労働組合の交渉力が強いこともまた、賃上げをもたらす。賃上げを要 ………

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