連載 病める世相の心療内科

訂正不能な妄想が溢れる現世

2023年8月号 LIFE [病める世相の心療内科(79)]

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妄想は真実より強固である。妄想とは一般的に、現実から乖離して、他者には共感できない想念をいう。つまり、周囲の多くが共感しうる内容を真実と呼ぶなら、真実によって訂正不能な確信をいう。いまの世をつらつら打ち眺めると、真実より妄想をかきたてる雰囲気があたりを覆っている。妄想を抱く者は病気と決めつけるのは間違いである。妄想は誰にも多かれ少なかれある。それを日々検証しながらどの程度制御できるかで、人の自我の強さを推し量ることができるのである。妄想の種類は、細かくいろいろあり、代表的なのは、近所から電磁波で狙われている、街で悪い噂を流され、周囲に馬鹿にされている、といった被害妄想である。引きこもりがちのシャイな人々には珍しくない。また、実際は健康なのに、癌になったと思い込むなど、ちょっとした異常をとんでもなく悪い病気と結び付けて不安になる心気妄想は ………

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