特別寄稿 樋田 毅/文藝春秋に「私の異論」 野村秋介氏は黒幕だったのか?

玉ねぎは、皮を剥いても剥いても、新たな皮が出てくるだけで、中身は出てこない。記事を読んでいて、そんな徒労感を感じてしまった。

2023年7月号 DEEP [一種の小説?]

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月刊文藝春秋6月号に、「朝日襲撃『赤報隊』の正体」と題した記事が出た。25ページにわたる巻頭記事で、新右翼の大物の野村秋介氏(故人)が一連の赤報隊事件の黒幕的な存在である可能性について言及している。私も拙著『記者襲撃―赤報隊事件30年目の真実』で野村氏について取り上げているが、一連の事件の黒幕とは書いていない。つまり、黒幕説には違和感を持っている。事件を追い続ける文藝春秋社の取材班に敬意を表した上で、私の率直な見方を述べたい。

3千万円受け取った男に辿り着けず

論点は四つある。まず第一は、1987年5月3日に朝日新聞阪神支局が散弾銃を持った男に襲撃され、記者二人が殺傷された事件の直後、野村秋介氏が実業家の盛田正敏氏に電話し、3千万円の現金を用意するよう依頼したエピソードについてである。文藝春秋の記事によると、野村氏の金庫番だったという盛田氏は手持ちの金をかき集めて約3千万円を野村氏 ………

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